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率の平均を求めてはいけない - 算術平均と調和平均 -

こんにちは。コグラフ株式会社データアナリティクス事業部の塩見です。
この記事では平均の計算で注意するべきことをお伝えします。それは、率の算術平均を求めてはいけないということです。


間違っている計算方法

利益率の計算を例に説明します。利益率とは利益を売上で割った値だとします。例えば利益が25で、売上が100であれば、利益率は0.25です。

東京、名古屋、大阪に支店がある会社全体の利益率を以下のような計算で求めていませんか。

会社全体の利益率(間違っている計算方法)

このような計算は間違っています。AVERAGE関数は算術平均を求める関数です。利益率の算術平均を求めてはいけません。

正しい計算方法

まず全社の利益合計、売上合計を求めます。この例では利益合計は151、売上合計は600です。そして、利益合計(151)を売上合計(600)で割り算して会社全体の利益率を求めるのです。

会社全体の利益率(正しい計算方法)

なぜ利益率の算術平均はダメなの?

それは支店の大きさを考慮していないからです。例えば東京支店は名古屋支店の3倍の売上があり、このような大きな支店の業績は会社全体の業績に大きな影響があります。一方、名古屋支店の業績の影響は東京支店より少ないでしょう。このように支店の規模の大小は判断に大きな影響を与えるのですが、「利益率の算術平均」はそれを無視した指標なのです。

速度の平均を求める例

行きは時速60km、帰りは時速80kmでドライブした時の往復の平均速度を求めてみましょう。60と80を足して2で割って時速70kmと計算をしてはいけません。時速は率です。率の算術平均を求めてはいけないのです。

正しい計算方法はこうなります。
片道の距離を$${x}$$とすると、行きにかかった時間は$${\frac{x}{60}}$$、帰りにかかった時間は$${\frac{x}{80}}$$です。往復の距離は$${2x}$$なので、往復の平均時速は

$$
\dfrac{2x}{\dfrac{x}{60}+\dfrac{x}{80}}=\dfrac{2}{\dfrac{1}{60}+\dfrac{1}{80}}=68.57
$$

調和平均とは

さて、ここまで率の平均を求めてはいけないという話をしてきたのですが、「調和平均を使うと率の平均を求めることができる」という声がどこかから聞こえてきました。調和平均とは一体何でしょうか。ちょっと調べてみましょう。

数学において、調和平均(ちょうわへいきん、英: harmonic mean, subcontrary mean)とは、いくつかある広義の平均のうちの一つである。典型的には、率(割合・比率)の平均が望まれているような状況で調和平均が適切である。

調和平均 - Wikipedia

確かに率の平均が求められそうなことが書いてありますね。

調和平均を計算してみる

正の実数について、調和平均は「逆数の算術平均の逆数」として定義されます。行きは時速60km、帰りは時速80kmでドライブした時の往復の時速の調和平均を求めてみましょう。
まず、時速の逆数を求めます。逆数とは掛けると1になる数のことですから、60の逆数は$${\frac{1}{60}}$$、80の逆数は$${\frac{1}{80}}$$です。
次に、逆数の算術平均を求めましょう。

$$
\dfrac{\dfrac{1}{60}+\dfrac{1}{80}}{2}
$$

最後に、逆数の算術平均の逆数を求めます。

$$
\dfrac{2}{\dfrac{1}{60}+\dfrac{1}{80}}=68.57
$$

この計算式には見覚えがありますね。「調和平均は逆数の算術平均の逆数である」と聞くと難しそうと思ってしまいますが、その正体は平均速度を普通に計算しているだけです。ただし、対象区間の距離が等しい状況である場合に限ります。この条件が成り立たない場合、調和平均で率の平均を求めることはできませんので注意してください。

まとめ

今回は算術平均と調和平均について説明しました。平均と言ってもいろいろな種類があります。意味を理解してうまく使い分けましょう。

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