7人の女侍 14話 ”続:女たちによる負の連鎖を断ち切れない男たち”
私の職場で一見仲よさげに働く女性事務員たち。
しかし7人もいると、当然人の好き嫌いというものがあるし、同じ職場である以上、仲間とも競争相手ともいえる微妙な関係性の中でなんとか均衡を保っています。
しかし、その均衡が破れることもしばしば。
女性ならではの上下関係がある中で、自身のステータスや旦那・子供のスペックによるマウント合戦まで加わってくると、何も起こらない平和な日常が珍しいほどです。
そういった状況が直接的な原因ではないにしろ、一人の女性が辞めることになりました。
それは一つ前の記事で書いたとおりです。
そしてその後継者として3人の応募者の中から選ばれたのが、40代の元派遣社員Mさんです。
20代、30代、そして40代のMさんの応募があった中からの採用。
辞める社員は30代なので、多くの現場男性が期待した「若返り」は実現せず。
いや、もちろんそれでもかまわないのです。
Mさんの経歴、スキル、コミュニケーション力などが他の二人を上回っていたという判断なのであれば、会社がより成長するためには妥当な決断です。
しかし実際に面接官から聞いた理由はどうでしょう。
・結婚していて子供がある程度大きいから、出産・育児を理由に会社を休むことはないだろう
・他の女性社員が40歳以上が多いから、同年代の方がうまくやっていけるだろう
こういった、無難で予定調和的な理由が主な決め手となったのです。
いかにも変化を嫌う地方中小企業らしい採用理由です。
結果としてこのMさんは、わずか半年で辞めることになったわけなので、この経営陣の判断はまったくの眼の節穴だったと言えます。
このnoteでこれまで紹介してきた女性たちには、こじつけとも言えるニックネームを付与しました。
しかし今回の場合は、「Mさん」。
そもそもコロナでマスク姿しか見たことがない上に、あまりにも辞めるのが早くてろくに会話したこともないため、まったく思い入れがありません。
Aさん、Bさん、などと不特定人物を一時的に仮称するのと同じ感覚で「Mさん」。
これがむしろニックネームといえます。
ただし一つだけMさんの印象を言うならば、「脚が綺麗」です。どうでもよかったですね。
さて、このMさんが仕事を続けられなかった理由はいろいろあり、本人に起因する原因を言ってもただの悪口になってしまうので書きません。
しかし、彼女に同情の余地があった点がひとつあります。
それは、以前紹介した、美人、そして八方美人でもある女性社員・マカナが関係しています。
この「マカナ」については、以前の記事を参照いただければ幸いですが、とにかく外見が美人な故に男が蝿のように寄ってくるにも関わらず、しばらく払いのけようともせず愛想を振りまく、そんな女性です。
つまり、外見を利用して周囲に味方(というか近づきたいだけの男性たち)を土塁のように築き上げ、自分は安全な位置にいようとする性質を持ちます。
かといって近づきすぎるのもご法度。へんに深入りしようとする男性は木っ端微塵で、屍累々です。
そのマカナが何をしたかというと、直接Mさんに何か手を下したわけではありません。
入社後のMさんは、彼女に与えられた属人的かつ煩雑な仕事を効率的に処理することができず、だんだん誰よりも帰る時間が遅くなっていきます。
新人の事務員のこのような状態は明らかに異常なので、本来なら上司がフォローすべきでしょう。
仕事を手伝ったり、「後は俺がやっておくから帰っていいよ」くらいのことは言ってほしいところです。
しかし、私の会社の仕事は「部門」よりもむしろ「男性か女性か」で別れているのです。
にも関わらず女性は皆平社員で形上はフラット。
別にMさんを助けなければいけないいわれもなく、女性たちは自分を犠牲にしてまでMさんをフォローしません。
多くの女性社員が家庭を持っているので残業したくないという前提をさしおいても、手伝ったからといって評価が上がって給料に反映されるような評価制度も皆無なのだから、必然です。
したがい、Mさんの上司である男性は、仕事を手伝うことができない。
でも一応、役職者として部下を監督する立場であることは理解しているようで、事務所にはいるようにしていたようです。
しかしそれが裏目に出ます。営業活動のために外出してMさんを事務所に放置していたほうが、まだマシだった。
上司は事務所で何をしていたかというと、
「大好きなマカナと雑談」
というわけです。
もちろん四六時中雑談しているわけではありません。
しかし事あるごとに、山積みの仕事に追われるMさんを横目にわざわざ別部門の島にやってきて、マカナに話しかけるわけです。
会話を横聞きすると、その瞬間で日本で行われているあらゆる会話の中でもワースト10に入るであろう、どうでも良い会話ばかり。
上司のたわごと
→ マカナのカラ笑い+カラ返事
上司のざれごと
→ マカナの愛想笑い+カラ質問
・・・以下ループ
これは情報量0ビットの会話といえます。
いや、聞くべきではないという情報のみ持っているから1ビットか。
ともかく聞いた時間を返してほしい。そう思わせる生産性のなさです。
Mさんからすれば、自分が仕事に押し潰されそうになっているそのときに、上司が手伝ってくれるわけでもなく、わざわざマカナにどうでも良いちょっかいを出しにいっているわけです。
別にMさんがその上司を男性としてどう思っているかにかかわらず、これは面白くないに違いありません。
Mさんのこのときの心境については、私が直接聞いた話ではありません。
しかし単なる想像というわけでもなく、Mさんとよくコミュニケーションをとっていた別の女性社員から言われたことです。
その上司も、マカナも、人として最低だ、となぜか私に言ってきました。
いや、その二人に直接言ってよ。無理か。
さて、この救いようのない状況の顛末は、マカナをはじめとした女性たち自身の問題である以上に、会社の上層部の男性たちが主原因になっていることは説明に及びません。
私はこの問題を社長に直訴しましたが、3代目のボンボン社長には何も響きませんでした。
本来、社員の士気向上が仕事のはずの総務部長に対しては、過去のいろいろな彼の言動からしてハナから期待できません。
そんな改善のいとぐちがつかめない中、早くもMさんの後継者が採用されています。
この問題に対し何も対策がなければ、この負の連鎖が絶たれることないでしょう。
これまで永らくこの会社は、いや、この会社の男たちは、何も変えられなかったのです。
つまりは、入社3年で総務課長に祭り上げられた私がなんとかするしかありません。
Mさんが退職するまでもう少し時間があるので、会社の悪い部分を聞き取る作業が大前提です。
ただし、Mさん自身が実はかなり癖のある人なので、本音を言ってくれるのか、建設的な意見が出てくるのか、はとても微妙です。
あとは、男性と女性の仕事の割り振り見直しであったり、評価制度の改正であったり、管理職教育であったり、マカナを黙らせることであったり、総務部長を役職から引きずり下ろすことであったり・・・
書いてて目眩がしてきました。この猛暑のせいなら良いのですが。
完
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