ぷにぷにの賽銭箱

 賽銭箱に5円玉を放り込む。からんころん、と音がしない。あれ?と疑問に思う。このまま鈴を鳴らしてもよかったのだが、なんだか気味が悪いので、もう一度硬貨を投げる。5円玉はもうなかったから、10円玉だ。
 ほいっと投げるが、やはり音がしない。周囲を見渡すが、人はいない。罰が当たるなと思いながら、賽銭箱のほうへ近づいて触ってみた。
 なんと、これが柔らかい、ぷにぷにだ。おもちのような、赤子の肌のような。どうりで音が鳴らないわけだ。
 触っていると何回も何回も触りたくなってくる。ずっと触っていると、賽銭箱がくすぐったそうにして空へ飛んで行った。神主はカンカン、あ、鳴った。

(了)

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