雨区

 ある日、一丁目では雨が降り、二丁目は晴れていた。
 翌日も、一丁目では雨が降り、二丁目は晴れていた。
 翌々日も、翌週も、翌月も、翌年も、一丁目では雨が降り、二丁目は晴れていた。
 一丁目で雨が降り、二丁目が晴れだしてから一年と二十七日が経過したころ、一丁目を「雨区(うく)」、二丁目を「晴区(せいく)」と呼称することにした。そして、それぞれの地域へ引っ越すことを希望する者を募った。

 当然、晴区は人気である。なんせ雨が降らない。曇りすらない。ずっと晴れている。高層マンションの最上階は高所得者たちが取り合った。
 雨区に住むひとがいるのかと心配するひともいたが、がんらい出不精で晴区の一等地に住めるほどの年収ではないひとのうち、少し頭が回る人たちは雨区に居住した。家のグレードが、晴区に居住した場合より高くなるというのがその理由だ。雨区で5LDKの一軒家に住むひとは言う。
「どうせ毎日雨なんだから、少しでも広い家のほうがいいに決まってる。わざわざ晴区に住むやつはばかだ。」
 おなじくらいの年収で、ワンルームの小さなアパートに住んでいるひとは言う。
 「どうせ毎日晴れなんだから、家にいないで外に行けばいい。何が楽しくて雨区に住んでるんだ。」

(了)

「選挙」→「区」→「雨」+「区」
今日ならではという感じの言葉の結びつき。

なんかもっと膨らませそうな気がします。
農業とか、どうなるんだろう。

それではまた。

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