膨れる鍵

 「またか。」
 僕は鍵を袋に入れて、鍵屋に電話をした。鍵が膨らんでしまい、使えなくなった。
 最初は、「あれ?入りにくいな?」くらいのものだったのが、気付くとパンパンに膨らんで全く穴に入らなくなる。これを一週間単位で繰り返している。
 「まあ、うちとしてはいいんですけどね。」
 と言いながら、鍵屋はスペアキーを用意してくれる。
 スペアキーで部屋に入ると、テーブルの上に先ほど袋に入れた鍵を取り出し、柄の方をかじる。いい具合に発酵していて、ほくほくと柔らかいのだ。

(了)

それではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?