山本長五郎賞

 山本長五郎賞は日本の賭博文化発展に貢献した優れた文学作品に贈られる文学賞。主催は清瑞社、協賛に日本中央競馬会や全日本遊戯事業協同組合連合会、楽天銀行など。
 第一回受賞作品は天田愚庵『東海遊侠伝』

選評
 『海老名清和 最後のしぼり』は、日本バカラ協会初代会長の海老名 清和の生涯を書き綴った作品で私小説の体裁をとっているが、作者は清和の孫、海老名 正義。
 心情や風景の描写に力を入れようとしているのだろうが、全く伝わってこない。作者は62歳を過ぎてから執筆にとりかかったそうで、小説は何歳から書き始めたってよいのだが、これまでの人生で全く本を読んでこなかったことが分かってしまった。自身の力量をきちんと見極める力も作家には必要。

 『ギャンブル輸血』は輸血行為が不確実性を帯び、一定の確率で身体に不調をきたすが、その場合は国から配当が出るため、皆こぞって不健康になりたがる世界を描いたディストピア物。
 着想そのものはさほど独創的ではなく、タイトルもよくある言葉と言葉を紐づけて馴染みない言葉に仕立て上げただけであり、ストーリーも結末に向けて尻すぼみになっていく印象。
 また、この作品は賭博文化の広がりに警鐘を鳴らす意図が垣間見え、本賞の設立過程と照らしたときに不適当であるとも判断した。

 『N.T.U.C』は本年度の最優秀賞受賞作品。「ネオ・トーキョー・ユニオン・サーキュレーション」の面々が巻き起こすドタバタコメディ、と思わせておいて中盤からの展開が非常に優れている。
 アメコミの強い影響を感じさせるが、それぞれのキャラクターの個性は日本の賭博文化との親和性が高く、とても親しみやすい。うまくはまればシリーズ物としての長期連載も可能であり、作者は慢心することなく作家としてのキャリアを積んでいって欲しい。

 なお、最終選考まで残っていた『紅茶の七対子』は紅茶と麻雀を題材にした七編の短編アンソロジーだったが、収録されている短編の一つである「10点1円のアールグレイ」の内容が、選考期間中の行政判断により賭博と言えなくなってしまったため、今回は選外という形になった。
 本来であれば受賞してもおかしくない作品だったが、連作のつながりが非常に重要である本作品内の短編の一つが賭博と関係ない内容であるのは、賞の性格を鑑みると問題であると判断させていただいた。再挑戦を期待したい。

(了)

このお話は、9日前に読んだ田丸雅智「たった40分で誰でも必ず小説が書ける 超ショートショート講座」(WAVE出版)を参考にして書かれたものです。

それぞれのに深い意味付けがあまりできていない。

それではまた。

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