書き心地の良い都庁

 ある日、巨人が東京に降り立って、まずは都庁を二つに割った。北側は捨て、ナイフのようなものを使って南側の先端を、労働委員会事務局のあたりから削り始めた。

 おおきな紙をふところから取り出し、線路をまたいで御苑のあたりに敷いた。風が強くて紙が飛んで行ってしまうので、永田町までひょいっとジャンプして、国会議事堂をぐいっと引っ張り、紙の上部にぽいっと置いた。

 よしよしとうなずきながら都庁の北側を持って紙に何かを書いた。絵らしい。ちょっと間違えたので、今度は霞が関まで行って中央合同庁舎第6号館A棟を引き抜いて、出入国在留管理庁のあたりを使って消した。

 陽が落ちて辺りが暗くなってきたので、お台場まで文字通り足を伸ばし、テレビ局の球体をくるくると回しながら外して中をくり抜き、LEDをぶち込んだ。それをひもに括りつけて頭に巻いて額のあたりで固定し、夜通し作業を続けていた。

 都民は熱狂し、巨人の作業を見守り続けた。代々木公園に皆が集まり、パブリックビューイングをしていた。

 あくる日、巨人の作業が完了し紙を都民に披露した。そこに描かれていたのは、それはそれは大きくて綺麗なお餅。

(了)

6月6日から始めていますが、まもなく一ヶ月が経過しようとしています。
今のところ、8月までは毎日続けようと思っています。そのあとは、いろいろと考えています。

それではまた。

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