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2015年の作文・5月

5月1日

◇軍楽隊の通り道

 

私の家の前を軍楽隊が通り過ぎてゆく

勇ましいかと思いきや

案外のどかな雰囲気だ

聞えてくるのは「となりのトトロ」や「千と千尋の神隠し」

それから「アルプスの少女ハイジ」や「母をたずねて三千里」

軍楽隊に続いて少年少女合唱団が透明な声を響かせている

最後にボーイソプラノのソロで「トムソーヤの冒険」

なんだか勇気をもらったぞ

よし私もあとにつづこう

運動着に着替えて外へ飛び出す

すると昔の仲間達が集まってきて一緒に走ろうと言う

私達は声を掛け合い走った

「よごれっちまったーかなしみにー」

「きょうもこゆきのふりかかる」

「よごれっちまったーかなしみにー」

「きょうもかぜさえふきすぎる」

私のあとにつづいて米軍のようにみんなが声を出しながら走ってゆく

いったいなんだいあの連中

体育会系文学部

走りながら詩をよんでるぜ

文武両道を理想とする日本にあってはいいことじゃないか

さて連休だがどこへ行くべかな

体を動かして

頭をきたえて

陽気な気分で歌でも歌いながら

青空の下でランチをしよう

おいしい肉と野菜をみんなで分け合って

小川で冷やしたビールを飲もう

いいね

そうしよう

 

 

5月2日

◇舟

 

ぼくの笹舟は流れに抵抗することなく

流れていく

きみの芭蕉の舟は浮力に抵抗することなく

浮かんでいる

誰かが同じ河にレタスの舟を浮かべた

でもあっという間に食べられてしまった

 

 

5月3日

◇月

いい月だ

 

 

5月4日

◇手をつないだ夜に

 

手をつないで歩いてた

あの夜のことを

きみはおぼえていますか

ぼくは忘れてしまったよ

思い出したらせつなくなるから

 

 

5月5日

◇五月五日の五時

 

二千匹の雨雲たちが午前五時の空を悠々と泳ぐ

突風が吹いてカラスたちも方向が定まらない

アネモネが首をそろえて揺れる

桑の木から振り落とされたイモムシがアスファルトの上を必死に走ってゆく

鳥に見つかったらたいへんだ

きょうは日本列島と同じ大きさの鯉のぼりをあげる計画が実行される日

まるい地球の上を一匹の巨大な鯉のぼりがはためく

宇宙からそれを観られたらどんなに壮観だろう

 

 

5月6日

◇読書

 

岸田衿子『だれもいそがない村』教育出版センター

 

 

5月7日

◇読書

 

『声で読む日本の詩歌166 おーいぽぽんた』福音館書店

 

 

5月8日

◇シリーズ自然の歌

 

山の歌

山山山山山山とかさなりて山のむこうもさらに山山

 

川の歌

川川川川川川と川ながれながれながれて川ながれゆく

 

海の歌

波波波波波波と波たちてむげんの波をうむ海ひとつ

 

月の歌

おお月よ時々刻々といろかえて日々にかたちをかえるものなり

 

 

5月9日

◇読書

 

岸田衿子詩集『たいせつな一日』理論社

 

 

5月10日

◇寝込み

 

寝込んで寝込んで寝転んで

 

 

5月11日

◇起きない

 

ぼくは起きないことにした

 

 

5月12日

◇お見舞い散歩

 

お見舞いにいって散歩した

 

 

5月13日

◇夜明け

 

夜明けだ

嵐のあとの夜明けだ

スケールの大きな空模様の下で

私は北へ向かう雲の連合艦隊を見送る

 

 

◇風の歌

 

風風風風風風とふきあれてすべてさらって月がでる

(読み方:かぜかぜかぜふうふうふうとふきあれてすべてさらってつきがでる)

 

 

◇うろこ雲

 

うろこ雲よりあつまりて竜になる

 

 

◇ジェット機

 

青空を二つに裂いてゆくジェット

 

 

5月14日

◇欲望と戦う

 

まったくやっかいなものである

欲望である

それが敵なんだ

それが元凶なんだ

それが幸福の邪魔なんだ

だからと言って

欲望を叩きのめすのはたやすいことではない

甘いものをほしがる子に甘いものをあげるとすごく喜ぶ

だからついついアイスクリームを買って来てしまう

甘いものを欲しがる子どもの食欲

それを満たしてあげたいという親の欲望

さあそいつを消せるか?

だめ

虫歯になっちゃう

メタボになっちゃう

ゲームやってもいい?

「いいよ」と言うと飛び跳ねて喜ぶ子を見たいから

ついつい「いいよ」って言ってしまう

それでいいのか?

子に嫌われてもそこで「本を読みなさい」と言うべきではないのか

そう言えたとしても

大人は大人の欲望に負けて

やっぱりしたいことをするんだよ

じぶんができないことを子どもたちにだけはやれと言う

矛盾だ

欺瞞だ

ズルだ

卑怯だ

欲望を抑えたらおさえた分だけ欲望は反逆を企てる

恐ろしいマグマになってあとで爆発する

どうするこの欲望の悪循環

どうする資本主義

どうする消費社会

どうする少子高齢化

禁欲主義者が考え出したことなんかくその役にも立たない

脅したってだめだ

欲望は賢い

欲望は巧みだ

欲望は俺たちみんなをたぼらかす

時に正義の顔をして

時にセンチメンタルに

時にロマンチックに

時に雄弁に

俺たちみんなをだめにするんだ

ああまたやられたか?

このコトバの列にも欲望が十分に関わっているじゃないか

くっそ!

 

 

5月15日

◇たんぽぽ娘の冒険

 

ある日

たんぽぽの種がふわりふわりと宙をさまよっておりました

それを見かけた春風が声をかけました

娘さん きみはどこへ向かっているのかね

ママを探しているのよ

わたしの帽子は白いから

わたしのママも白くて大きな存在だと思うの

ノースポールのところへは行ったのかい

ええ でもそこにママはいなかった

チューリップ畑には行ったのかい

ええ でもそこにもママはいなかった

マグノリアのとこへは行ったのかい

ええ でもそこにもママはいなかった

すると春風は言いました

ママのところへ運んであげよう

こうして春風はぴゅーとたんぽぽ娘を空の奥へともちあげました

たんぽぽ娘は白くて大きな雲の中へと消えてゆきました

 

このお話のつづきはみなさんで考えてみて下さい

 

連想1)たんぽぽ娘は泣きながら地上に降りて来て芽を出し無事に花を咲かせるというハッピーエンド。

連想2)雲の上にたんぽぽのお花畑が広がっているという幻想的な話。

連想3)雲をよく見たらたんぽぽの種の集合体だったというびっくりする話

 

 

5月16日

◇薔薇はバラバラ

 

ガガガダッタガギガグググ

人工知能には負けません

バラバラビビビグーデンバルフ

人工知能なんかに負けるかよ

ゾバーニメソメキ

人工知能には負けんぞ

ジュワリンセトワーナ

人工知能工知能にも負けないのだ

ウウウウウウ

人工知能が作った人工知能による人工知能にだって負けない負けない

薔薇の花はいつもバラバラに散ってゆく

 

ドッテテ

ドッテテ

ドボルザーク

 

ドッテテ

ドッテテ

ドビュッシー

 

ゲーテゲーテナゲーテ……

 

 

5月17日

◇往復

 

人を連れて集会へ

人を連れて靴屋へ

人を連れてタコライス

人を連れて集会へ

 

 

5月18日

◇まとめなくてはならない

 

どうやらここらでまとめなくてはならないようだ

 

 

5月19日

◇読書

 

ヘルマン・ヘッセ『車輪の下で』(松永美穂訳)光文社古典新訳文庫

 

 

5月20日

なし

5月21日

なし

5月22日

なし

 

5月23日

◇午後の睡眠

 

午後起きられない

睡眠のリズムが狂った

午後寝てしまう

 

 

5月24日

◇母を語る

 

母を語ることで母たちの思いをすくいあげる

 

 

5月25日

◇蚊と文化

 

成虫になったばかりの蚊が

文文文と飛んでいる

ぼくは彼の初めての獲物としてじぶんの腕を差し出す

蚊は人の血を吸おうとする

でもうまくいかない

文文文

何度もアタックする

毛が多くてうまく着地できないのか

世の中では小さな挑戦者たちがパチンと叩かれ命を落す

パチン

文文

パチン

一度も血を吸えずに死んでゆく者もいる

デングウイルスを媒介するという理由で

殺虫剤をまかれて根絶やしにされたグループもある

人間界の論理を適応されて

小さな生物の命は詮無し

乙女たちよ

虫刺されの跡を気にするなかれ

それをチャームポイントと呼んでみたらどうだろう

おはよう花ちゃん

チャームポイント1

いいじゃんメグちゃん

そっちもチャームポイント2

乙女たちよ

ハイソックスで隠す必要はない

淑女よ

ストッキングで隠す必要はない

小さな命に糧を与えた栄誉なのだ

チャームポイント3・4・5

パチン

「蚊ごときに情けは無用」

「害虫は駆除、駆除」

「にんげんのいのちが優先だよ」

蚊はね

悪いものばかり媒介しているわけじゃあないのだよ

血と血の交流で民族間の融合に貢献しているのだ

つまり偏狭な民族主義と闘っているわけだ

人類はひとつ

みんな家族だ

文化だ

文化だ

文明だ

ぼくは蚊にくわれても掻かない

だから痒くならない

ほんとだよ

実際痛くも痒くもないじゃないか

ドラキュラに咬まれることを思えばだ

恐竜に齧られることを思えばだ

 

 

5月26日

なし

 

5月27日

◇読書

 

ヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』(髙橋健二訳)新潮文庫

 

 

5月28日

なし

5月29日

なし

5月30日

なし

5月31日

なし

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