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腰下肢痛治療の流れとセルフケア

単に腰が痛いものを腰痛と呼ぶのに対して、下肢症状(脚のしびれや脚に力が入らないなど)が伴うものを「腰下肢痛」と呼びます。

下肢症状がデルマトーム(神経の走行)に一致している場合は、神経根が圧迫されている(神経根症)ことをまずは疑います。神経根症には椎間板ヘルニア(若者に多い)によるもの、変形性脊椎症(年配者に多い)によるものがあり、もっとも障害されやすいのがL5(腰椎の一番下から出ている神経)です。

臀部に痛みがあった場合は、変形性股関節痛や仙腸関節に起因するもの、下肢症状のみであれば、梨状筋症候群・腓骨神経麻痺などの神経絞扼障害、間欠性跛行をきたしていれば、脊柱管狭窄症や閉塞性の動脈硬化や閉塞性の血管血栓炎が疑われます。

鍼灸院に来られる方のほとんどは、すでに病院で診断がついている場合がほとんどですが、鍼灸治療をするに当たって判別する必要があります。

まずは発症起点(どうして痛くなったか)を確認。発症起点がよくわからず、いつのころからか痛みが出るようになったというケースもあります。

その後の手順としては、仰向けでSLR(ストレートレッグレイズ)テスト ボンネットテスト → ニュートンテスト1.2 → ゲレンテスト →   パトリックテスト → PTR(膝蓋腱反射)→ 下肢知覚検査 →     下肢筋力検査と進みます。    

〇SLRテストは、太腿の裏側が伸ばして坐骨神経根が引っ張られたときの痛みの状態をみるもので、陽性(痛みがひどくなる)となれば椎間板ヘルニアの可能性が大きい。

〇ボンネットテストでは、梨状筋の緊張度合いを調べます。

〇ニュートンテスト1.2では、仙腸関節の異常を調べます。

〇ゲレンテストでは、やはり仙腸関節の異常を調べます。

〇パトリックテストは、股関節症を調べるためのテストで、坐骨神経痛との鑑別に有用です。

〇PTR(膝蓋腱反射)は、膝蓋の下(大腿四頭筋腱)を叩打して、正常であれば膝関節が伸展します。これによって太腿神経(L2~4)の反応をみます。もし伸展しなかったり、健常側と比較して伸展の度合いが弱ければ、大腿神経(L2~4)の機能障害が考えられます。

〇下肢知覚検査は、知覚の状態を調べるものです。知覚神経に異常がある部位によって、どの部分の神経が障害されているかを判別します。

次にうつ伏せで、FNS(エリーテスト、大腿神経伸展テスト)     → ニュートンテスト3 → ATR(アキレス腱反射)を行っていきます。

〇エリーテストでは、大腿前面を走行する大腿神経を伸ばします。陽性であれば大腿神経(L4)神経根がストレスを受けていることが示唆されます。

〇ATR(アキレス腱反射)は、アキレス腱を叩打して、通常であれば足が足底方向へ曲がりますが、L2~4神経が障害されていると動きが弱くなります。陽性なら(L2~4)の機能障害の可能性が高い。

〇ニュートンテスト3は、ニュートンテスト1.2と同様に仙腸関節の異常の有無を調べるためのものです。

〇下肢筋力検査では、L4神経障害なら足関節背屈力低下、L5神経障害なら拇趾背屈力低下、S1神経障害なら、拇趾底屈力の低下がみられます。

このような理学検査ののち、どの部位に刺鍼するかを決定していきます。

神経根症状に対してなら、神経根刺鍼や状況に応じて坐骨神経ブロック刺鍼や腰神経叢刺鍼。これらと併用して、下肢症状への対症(局所)療法として、症状が出ている部位への刺鍼。

また、股関節性のものや仙腸関節由来のものも、それぞれ対応した治療を行います。

これらのことは施術する者が行います。患者さんは自分で鍼を打つこはできませんが、自身でできることはあります。まずは安静。急性期の痛みの場合、安静が最優先されます。椎間板ヘルニアや変形性脊椎症などの神経根症、梨状筋症候群、股関節症、仙腸関節由来の痛み、脊柱管狭窄症のすべてにおいてです。

自然治癒力が発揮されるための環境が整わないから痛みや炎症が治まらない、もしくはひどくなるのであって、2週間の厳格な安静を保つことで、多くの場合症状はかなり軽くなります。

痛みが軽くなったら、できる範囲の筋トレやストレッチなどの運動を行います。運動により血行が促進することで発痛物質の滞りは軽減、また痛みの感受性は正常に戻ります。

いきなり運動するのが怖いという場合、入浴時間を長くするなどの温熱刺激でしっかりと患部を温めます。また急性期であっても、温めることで痛みが和らぐことは多くあります。

読んでくれてありがとうございます。

いろいろと記しましたが、やること(できること)はそんなに多くはありません。






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