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+ 灯りのない森 メランコリックな雨 野苺を摘む少女が 東の空に微笑む + 雨粒 生まれる…
張り裂けそうに 脆い 時の行進は 未だ止まず 一人歩く 老婆の掌に ひやり 滴が零れ落ちる 霧…
懐かしく甘い 雨の香り ベランダに 置き忘れた ティーカップに 幾つもの 水滴が 吸い込まれる …
窓辺の椅子に 私は座る 誰かが 花瓶から 花弁を 私に注いでいる 空には月が 浮いている 雲が…
小寒の雨の 湿度に抱かれたまま 言葉の尽きた人達は 感慨の風景から消える 私は彼らに 何かを…
風が吹き抜ける時 あなたは空を見上げる 優しい雨を浴びながら 花は大地に咲いている 記憶は…
※ 開演時からもう 雨は降り始めていた 私は客席にいた 招待券を握っていた “雨が白く見えます 危険です” 誰かが言った 観客たちは去っていった 私は動けなかった 招待券を握り続けた ※ 気が付けば 私はロビーにいた 古い劇場は 丘の上に建っていた 私は椅子に腰かけた 丘の麓の街を眺めた 雨は滝のように 下へと流れ落ちた 私は声の主を探した 街は沈みかけていた ※ 舞台の幕は 上がる気配がなかった 私はまた 客席に座っていた 招待券は すっかり湿っていた 誰もいな