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強い日差しに照らされて、アスファルトの道を歩く。
そこがどんなに都市部であれ、
蝉の声をはっきりと聞くことができる。

いつ蝉が鳴き出したのかは判然としない。
毎夏、そういえばいつのころから蝉の声が
当たり前になったと、思うのだった。

ただ、一度だけ、蝉が鳴き出したのを
はっきりと確認できた時があった。
たまたま隣にいた人も「あっ」という顔をしていたから、
おそらくその人も、その時にその夏の声を初めて聞いたのだろう。

きっと今よりも感性が優れ、物事に敏感だったに違いない。
あれから数十年が過ぎて、何となく日常を過ごすようになっている。

時機に聡くありたいと思っていても、
所詮はこの程度、
もっとも身近なところの節目にさえ気づかないのである。

自分よ、もうちょっと頑張れよ、などと励ましはするのだけど、
あれもこれも、良い時を逸しているような気がする。

ま、これも人生。
せめて、コーヒーの味くらいは違いがわかるようになりたいと思う。
(それもとても難しいのだが)

なんにせよ、今日はちょっと良い豆を使って違いを感じようじゃないか。

コーヒーのある風景。

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