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水筒。

台所の棚の奥に、水筒が放置されているのを見つけた。
小銭さえ持っていれば、いや、それどころか、
この頃はカード一枚、あるいはスマホ一台持っていれば、
ほとんどいつでもどこでも好きな飲み物が買える便利さに甘え、
水筒を持ち歩くことがめっきりと減ってしまった。

もう使うことはないだろう。
いっそのこと処分してしまおうか。
と思った時、水筒に水を注ぐ音をふと思い出した。

なんと心地いいのだろう。
一定のリズムで刻まれる音は、優しくもあり懐かしくもある。
もしかしたら、遠足や旅行の当日の朝を思い出して、
心が条件反射で弾んでいるのかもしれない。

久しぶりに水筒を持って出かけてみようか。

家にはカーテン越しに夏の日差しが入ってくる。
こんな日は、いくら家の中が好きといっても、
外に出ないのは惜しくもある。

であるなら。
水筒にコーヒーを入れて、外に出ようか。
あの音を聞いて外に出よう。

コーヒーのある風景。

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