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夏の夜

夏の夜の道を、ただ歩く。
耳には何もつけず、ただ歩いてみる。

すると、虫の声が聞こえる。
車の、アスファルトを削る音が聞こえる。
そして、自分の足音を久しぶりに聞いた気がした。

ただ歩くのは、時間を無駄にしているように思っていた。
人間の本質はものを考える云々などと言われると、
オーディオブックの一つでも聞いて歩かねば、
いかにも怠惰で、人間性すら放棄しているような錯覚にも陥った。

けれども。

頭を空にして、ただ歩くのもいいではないか。
夜の音を聞く、夜の景色を見る、夜の匂いを感じる――。
今ここにあるものに意識を集中して、
今ここを感じてみるのも、人間らしい営みだと思った。

なんて。
難しいことはさておき。

夏の夜は気持ちいいから、ただ歩くのはいいものだ。
もちろん、のどが乾いたら、
煌々と輝く自販機を見つけ、アイスの缶コーヒーを飲む。

夏の夜に飲む缶コーヒーのうまさを知らないのなら、
ぜひ一度試してほしい。
その時は、コーヒーの味と共に、ぜひ周りの音や景色、匂い感じながら。

コーヒーのある風景。

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