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ピアスを開けた、軟骨に

痛かった?思ったより痛くはなかった。

以前から軟骨ピアスをとても可愛いと思っていて、イヤーカフを買っても買ってもすぐに無くし、でも前から軟骨ピアスは痛いと聞いていたから開ける勇気なんて無かった。

この超絶つまらない世の中、ライブに追われていた生活の当時はやらなくて(できなくて)今しかできないことってなんだろう。そう考えていると一週間前、私の中からイケイケのギャルが突如耳元に現れた。


「軟骨開けてもよくね?」


最初にピアスを開けたのは20歳の時だった。

学生で例によりお金はない、親に「ピアス開けようと思う」と一応話すと家族でピアスを開けているものはいなかったため「絶対に病院で開けなさい」と言われ、かかりつけ医である地元の皮膚科に行くことにした。

親がそう言ったくせに親からピアス代は出してもらえなかった。自分の体だし自分の金でもいいかと思っていたが、今思い返すと自粛要請しといて一切お金を出さない今の日本政府と同じだなとふと思う。

その時はちょうど学園祭の売り上げで5000円をゲットしたので、診察券を掘り出し、数年ぶりにその地元の皮膚科の先生のところへ行った。先生はおばさんに括られる女医さんで、テキパキとした頭の切れる先生だった。

「では、行きますよー!」
バチンッ

なんだこの診察していただいている時と同じテンポ感と、一切迷いのない潔さは。ファーストピアスは誕生石である9月の青くてしっかりとしたピアスを選び、耳たぶ左右一個ずつ、合計2つ開けてもらった。


耳たぶのピアスホールが安定した頃、既に可愛いピアスをたくさん持っていたため、もう1つ穴を増やそうと思っていた。左耳の耳たぶ。か、左耳の軟骨がいい。なんとなく、穴を増やすなら前から左耳がしっくりときていた。

軟骨ピアスは痛くなければすぐに開けていたが、勇気が出なかった。
私がピアスをしているのはオシャレをするためで、決して痛みを知ることで生きている価値を知れると言ったメンヘラ的理由では無い。ピアスが可愛いから、耳に穴を開けている。それ以上もそれ以下でも無い。

なんならビビリで高所恐怖症、怪談話は聞けない、映画の暴力シーンもまともに見れたことはなく、些細なケガでも痛いのが大嫌いだ。親知らずを抜いたときなんかは痛いのが嫌いすぎて麻酔が切れる前に痛み止めを飲んでいたものだ。


「今、軟骨開けてよくね?」


突然のギャルの降臨。だがしかし、ギャルの一声だけでは決められない。

毎週月曜日のお楽しみであるしいたけ占いを見る。
「天秤座、今週のあなたはゴールド色」当たると評判のしいたけさんは、大吉や大凶、1位や12位で占わない。「今週、今月のあなたはこんな状況になりやすいですから、こういう過ごし方をすることをおすすめしますよ」とアドバイスをくれるのだ。それを色で表現する。それもすごく的確であり、分かりやすい。

ちなみにしいたけ占いのゴールドの説明にはこう書いてある。


「報われる時、奇跡が起こる、何か大きな力によって動かされる。「ゴール!」のとき。この色が出ている時はとにかくつき進むこと。」


「「今しかねええええ!!!!」」

私と私の中のギャルと勢いが完全一致。

軟骨なのでさすがに病院で開けてもらうのは既に決定していた。光の速さで軟骨ピアスを開けてもらえる病院を探す。皮膚科はほとんど耳たぶしか開けてもらえないので、該当するのは美容系クリニックだ。ざっくり調べて予算は1万円前後が妥当だと知る。予算も合い、ご時世遠出はしたくないので定期券内の範囲に絞る。数件のクリニックを値段とアクセスの他、口コミや雰囲気などを確認してから1つに絞り、ネットで予約した。


迎えた当日。3年ぶりのピアス。

方向音痴だが駅から近く、しかもよく知っている道だったのですんなり着いた。駅ビルの中にあり、4つほどフロアを上がればその病院だ。

早速受付のお姉さんが出迎えてくれた。


「今回はボディピアスの施術でお間違い無いでしょうか?」

「はい」

「耳の軟骨ご希望とのことですが、どちらの箇所にされますか?」

「左耳のヘリックスで」

「かしこまりました、先にお代金頂戴いたします。現金払いでしょうか、カード払いでしょうか?」

「カードでお願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください。こちらの鏡とペンで開けたいところで印をつけてください。」

「お待たせいたしました、カードと控えをお返しいたします。ピアスの印は、こちらで大丈夫でしょうか?では、看護師が参りますので少々お待ちください」


5分ぐらいすると受付のお姉さんとは別で、看護師さんに案内された。

診察室に入り、まず荷物を置く。髪の毛が邪魔にならないようにヘアネットを被る。準備ができると手術台のようなベッドに仰向けになり、目隠し用ガーゼをされる。

程なくして男性の医師がやってきて、診察室は看護師と医師と私の3人になった。


「担当します、よろしくお願いしますね〜」

若干のオネエ口調が気になる。

「麻酔打ちますね、ちくっとしますよ〜」

「お仕事何されているんですか?」

「会社員です」

「そうなんですか、このご時世大変ですよね。では、バチンと音がしますよ」


バチンッ

...あ、、これ今開けた!??!今のバチンってやつ!??!
音はしたけど、一切痛みを感じなかった。気を紛らわすためのバレバレのお世辞会話は必要なかったのかもしれない。


「では、ゆっくり起き上がってください」

「こんな感じでよろしいでしょうか?」

「か、可愛い!大丈夫です!」

「では、施術は終わりです、お大事に〜」

「ありがとうございました!」

医師が退室すると、残った看護師さんから消毒の説明をされた。

「麻酔ってすぐ効くんですね!」

「今回は局所麻酔という麻酔ですぐに効くんですよ。親知らずとかだと神経に近いから時間がかかりますけど、耳ならすぐに麻酔効きますよ」

「そうなんですね、全然痛く無くてびっくりしました」

「麻酔は1時間ほどで切れてしまいますからね。では、今後の説明しますね。軟骨のピアスホールが完成するには3ヶ月〜半年かかります。なので最低2ヶ月はつけっぱなしにしてください。消毒液をお渡しいたしますので、朝夜2回、綿棒などにつけてピアスの前と後ろを消毒してください。何かございましたらまたご来院ください」

「はい」

「お疲れ様でした。では、お出口までご案内いたします」


看護師さんがエレベーターの前まで迎えてくれ、クリニックを後にした。麻酔はなんだかんだ3時間ほど効いた。耳で正座で足が痺れるような感覚が続いていた。


家に帰って改めて鏡を見る。ゴールドの左耳ヘリックス。
めっちゃくっちゃに可愛い。もし我が子を産んだら、こんな心情なのかもしれない。

開けて3日ほどはピアス特有の痛みがあった。お風呂上がり、いつも通りバスタオルで髪を雑にわしゃわしゃしたらピアスが引っかかって痛かった。やらかした、ずぶ濡れの素裸でフリーズした。


軟骨にピアスを開けて5日経った。特に問題なくこいつとやれている。しばらくは左耳を下にして寝れないことぐらいがネックだろうか。

痛く無かったの?と聞かれれば開けた時は全く痛く無いが、麻酔が切れたらズキズキ痛い。でも、そんな慢性ズキズキも3日ほどで終わったので気にするほどではない。


現在の私は刈り上げに左耳には軟骨ピアスのショートヘアレディ(もうガールだとか女子とか言えない年齢)、無意識に隠れやんちゃOLみたいになってしまった。



今日の一曲

左耳/クリープハイプ

クリープの曲で一番好き

Fever Believer Feedback/ハヌマーン

既に解散しているが、サブスク解禁で再熱。時雨とかtricot聴いてるとYouTubeのオススメによく出てきて無意識に聴いてたものだ。





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