【ライブ】TKfrom凛として時雨「The Second Chapter」 at Zepp Haneda 2023.9.24
8月からアジアツアーから回ってきたツアーも早くもファイナル。
大阪のゲリラ雷雨とは打って変わり、すっかり秋の気配漂う晴れた秋空が今日ツアーファイナルを迎える。
今回は1ブロック目のTK前で見ることに。
ライブ
1曲目の「melt」は白鳥の背に乗って優雅に湖上を舞うような、そんな優美さとゆっくり沈む壮大な深さに、大阪でも1度聴いているはずなのにTKと和久井さんの美しく儚い高音のユニゾンがずっと琴線に触れていて、涙が止まらなかった。
間髪入れず「凡脳」で慈悲の深いなだやかな「melt」の感動をすかさずブチ壊す。情緒の高低差が激しいセットリストに感覚が麻痺しているため、「TKならこのくらいやるだろう」とスッと理解してしまうのである。
「Showcase Reflection」は明朝体のリリック映像と共に演奏されたが、本来おしとやかさや上品さなど柔らかい印象を与えるはずの明朝体が、TKの鋭いギターに一郎さんのベース、あまたつさんの本場のラウドでメタリックなドラムの轟音が、文字を噛み砕くように叩き落とす。とカッコつけて表現したが、シンプルにTKがラストにかけて歌詞を飛ばしすぎて、「わざと破壊した」と言うより「勝手に崩れ落ちていった」と表現した方が的確かもしれない。それでもサウンドの破壊力と一糸乱れぬグルーヴはさすがプロ、しっかり曲として完成されているので途轍もない聴き応えである。
「Will-ill」で幕が上がれば登場時、いやそれよりも大きな大歓声に包まれる。
既に一度ライブを見ていて事前に情報が脳味噌に入っているからか、今回見る場所が違うからか、数曲終えて同じツアーにも関わらず、初日の大阪の時とは全く別物のライブだと感じていた。なので前回のライブレポをほとんど引用せず、改めて書いている。”ライブは生物”を痛感する。
今回の紗幕だが、曲によって上がったり下がったりする。スクリーン越しに彼本人がいるので2.5次元の舞台とも言えないし、かと言って同じ空間にいるため家で画面越しでライブ中継を見ている訳でもない。形容し難い演出に改めて不思議な感覚に陥っていた。
「Dramatic Slow Motion」のベースソロではTKが余裕の顔で一郎さんを指す。
この曲はなんとなく「走馬灯の曲なのでは?」と思うのである。「この耳鳴りが続けばいい」「世界がスローモーションに見える」、そうした歌詞から多幸感の過剰摂取で窒息死しそうになったときの、幸せな気分のまま死んでもいいと思える時に見る走馬灯。
「Crazy Tampern」の時に気がついたが、ギターボーカルのTKとドラムのあまたつさんでグルーヴを合わせてることが多い気がする。逆も然り、あまたつさんもかなりTKのことを見ているような気がした。
アコギの音色がまた一段と繊細さを引き立たす「haze」では、勘違いと思われても仕方無いのだが「暗闇は僕が切り裂いておくから」でTKが右手で客席を指差ししたのだが、ちょうどTKが指を差したその直線上にいたため、勝手に自分が差されていると思い、凍りついてしまった。
この時演出のため紗幕が降りたのだが、TKがしゃがんで下から顔を覗かせるなどお茶目な仕草を見せてからの「Fantastic Magic」はギャップが激しすぎて正直ついていけなかった。
だが、この日の「Fantastic Magic」は心臓を鷲掴みされたような轟とどよめきと同時に、懐かしさを覚えた。
そうだ、この紗幕、形状は違えど「Fantastic Color Collection」ツアーで見たんだ。TKのライブで初めて行ったライブが「Fantastic Color Collection」だった。初めてTKのライブを観たというのも大きいが、当時高校生でライブに行くためにバイトはしていたのもの、ライブに行く本数はかなり限られていたため、この時のライブも選び抜いた1本だった。
もう9年近く前になるが、バンドのライブでステージがスクリーンに覆われているのを初めて見たし、ライブ映像でも見たことがなかったから物凄く新鮮だった。だからこそより印象的なのだと思う。
本編ラストの「歌えるところは無いかもしれませんが、歌ってくれますか?」と「P.S. RED I」の無双っぷりはまさにヒーローだった。それまでも凄まじい集中力で難易度の高い曲を連発していたが、ゾーンの中のゾーンに入っているとしか言い表せなかった。
Cメロの「青が目覚めて〜」ではTKがピックを持つ右腕を下から上に何度も大きく振り上げ、今まで見たことの無いほどに煽り、直後では今まで聞いた事の無いほどの強いシンガロングが生まれていた。
本来映画「スパイダーマン」のために書き下ろしたはずの楽曲のはずだが、逆に「P.S. RED I」は「スパイダーマン」の映画をたった数分の楽曲に凝縮したような真っ赤な密度だった。
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アンコール、ツアーTシャツに着替えたTKが再登場。
「本人がアゲアゲセトリの自覚あるんだ」と心のツッコミをよそに貫禄の「unravel」を演奏し終えると、最後に「僕らはもっと死にますので」と言い残せば想定通りの「first death」、ここで想定外のモッシュ発生。サイケデリックでカオス、まさに悪魔が点在する「チェンソーマン」の世界に飛び込んだかのようだった。
アウトロのチェンーンソーのようなギターの金切り音、次々と人間の肉体が捻り暴発するような雪崩るドラムとベース、エレガントな存在のバイオリンはすっかり攻撃的なロックに染まり、地鳴りのような轟音に負けじとピアノは息絶え絶え「まだ終わっていない!」と言わんばかりに存在感をアピールする。
「単純明快愛楽死」のフレーズにちなんで表現するなら、ライブの「first death」は「混沌乱舞先鋭祭」とでも言うべきだろうか。
今回のツアーはこれと言った曲を引っ提げていないため、セットリストが読めなかった。だが最後に「first death」を持ってくるあたり、このツアーに関してはより「チェンソーマン」へのリスペクトを強く感じたのだ。
この曲にCrossfaithのあまたつさんのドラムが似合いすぎる。この曲を聴くためにライブに来たと言っても過言では無い。Crossfaithのファンの人にも観て欲しい、観て欲しかった。
Easy revenge
「Easy revenge」、意訳は「気楽に復讐を」。「チェンソーマン」で姫野がアキにタバコに書いて伝えたメッセージ、いや遺言と言った方が正しいかもしれない。
TKは復讐心や憤慨を音楽に昇華出来る。音楽にすれば誰も呪わず、誰も傷つけないどころか誰かの救いになる。だからTKの音楽が好きだ。
TKの音楽をタバコのように揺れるエモーショナルな煙とも、ホロホロと崩れる灰とも思ったことは無いのだが、”命を削り尽くす”と言う点で、彼のライブを”タバコ”と比喩出来るのかもしれない。TKのインスタを見てそう思った。
彼にとっての”Easy revenge”が「音楽を作ること」、そうならば私はその音楽を聴くという形で復讐に加担したいと常々思う。
第2章
今日のTKはシャウトする箇所が音源より多かったり、アッパーな曲ではすかさず曲中に客席を煽ったり、”ご機嫌”というと大人気無い表現になってしまうが、終始トップギアでテンションが高かったように思う。
今まで苦しそうに歌っていると思うことが多かったが、今日は、というか今回のツアー、いや、ここ最近、時雨の時でもずっとライブしているとき、物凄く楽しそう。
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今回のツアータイトルが「The Second Chapter」なのだが、正直彼にとってどの辺が第2章なのか分からずじまいだった。
以下、特に私個人の考えである。
個人的な話、今日のライブは誕生日イブライブで、TKからとんでもない誕生日プレゼントをもらったと勝手に思っている。
「P.S. RED I」の「re:Virthday(再誕)」に「first death」、「The Second Chapter」は「生まれ変わる」以前に「一度リセットする」の意味での”第2章”なのではないか?と思うのである。
TKにトドメを刺された今日までをバッサリ捨て忘れて明日から私も生まれ変わろう、そう思いつつ、ふとした時に忘れたはずの彼の音楽を求めてしまう気がする。
彼を知ってしまった以上、彼の永久機関から逃れられない。何度死んだとしても、もし全ての記憶を失ったとしても、またきっと彼の音楽に出会う気がする、今日のライブはそう思わざるを得なかった。