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映画「チワワちゃん」を見て【ネタバレあり】

 宣伝ポスターにこんなキャッチフレーズがある。
「チワワちゃんが死んだ。一緒に遊んでいたわたしたちはチワワちゃんの本名すら知らなかった」そのキャッチフレーズに、SNS世代の私はグッサリ刺された。

''東京湾バラバラ殺人の被害者は、最近姿を見かけなくなった友人であった。
だがしかし、本名、住所、素性を知っていたものは誰一人いなかった''


 都内のクラブで酒とともに夜な夜な踊り狂う若い男女数人のグループ。
遊び倒してキラキラとした生活を送っているが、人間特有の闇がドロドロと流れ出る。恋と友情とお金と笑顔と嫉妬、欲望を交えた光と影のコントラストが非常にはっきりした、まるでミュージックビデオのような彩度が高く眩い映像が、登場人物の心情を繊細かつ華やかに映し出す。

 最終的にはチワワを殺した犯人は明かされず、謎めいたままストーリーは終わった。犯人がチワワをバラバラにしてまで殺した理由も分からず終いだ。

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 「一緒に遊んでいるのにその人のことを知らない」矛盾しているかもしれないが、SNS世代の私からすると今の時代では普通だと思うのだ。

 劇中はクラブ仲間という設定だが、私の場合SNSのフォロワーである。
昨今SNSで友達を作るケースがほとんどで、大半がハンドルネームで呼び合っているためお互い本名を知らなくて当たり前だし、住まいは都道府県は知っていても住所までは知らない。職業を知らない場合も少なくなく、小学生のようにSNSで知り合った友人のことを親に紹介しているわけでは無い。

 無論、私の本名と住所を知っているSNSのフォロワーはほんの一握りだ。例え私がチワワのように死んだとしても、チワワのようにモデルとして世間的にも知られていたわけでは無い一般人は「あの人、どうしたのかな」で終わりだ。

 「ヘルタースケルター」「リバーズ・エッジ」などで有名な岡崎京子先生の短編コミックが原作の本編。

 現代に焦点を置きながら的確に表現されていた煌びやかな浅い人間関係。「映え」を意識したパキッとした極彩色の映像と、その場しのぎでつるんでいた仲間の無情さが垣間滲み出る空気が、鮮やかでモダンな空気を醸していた。
 映像美に魅了されながらも若者世代ならではの思いに重ねて考えさせられた。私の数少ない友人との関係は、さっぱりと浅はかなものなのか、互いが溺れているくらい丁度よく深いものなのか。

 FaceBookが全盛期の大人・子育て世代には刺さりづらいかもしれないが、Instagramが主流の2020年が10~20代の若者世代では非常に分かりやすい現代ならではの課題だと思う。

 観賞後の華やかな虚無感に、私は今の自分の生活と人間関係にどう向き合えばいいのか、思わず考えてしまった。

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