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●ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ●

「わかり合う」ということは人間ができる素晴らしい体験のひとつだ。
家族や友人や恋人でなくても、わかり合うことができる。それぞれが全く違う事情や悩みや孤独を抱えていても、わかり合うことができる。
それは心を癒し、目に映る景色を変え、明日の力になる。複雑で厄介で混沌とした思考を持つ人間にとって、とても素晴らしい体験と言わずなんと言うのだろう。

1970年の12月、ホリデーシーズン。誰もが待ち望む休暇に「置いてけぼり」された3人の物語。
全寮制の男子校の生徒アンガス、監査役の教師ハナム、料理長メアリーの3人に通じ合うところはない。お互いへの好意もない。なんなら衝突すらする。
歩み寄ることのない3人だけど、それぞれに違う問題や孤独を抱えているというのが唯一の共通点だ。

しかし置いてけぼりのホリデーを過ごすうち、ゆっくりと孤独が氷解していく。
それを見届ける私たちの心も氷解する。
「わかり合う」ということの素晴らしさを時間をかけて丁寧に描く映画だ。

深く心に残る作品と出会えた時、それを「幸福な映画体験」というのだろう。
なんとも幸福な133分だった。
使われている音楽もいい。
ホリデーシーズンにまた見たい。


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