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●関心領域●

美しい生活がそこにある。
心のゆとり、団欒のとき、満たされる美食、整えられた庭に輝く草花。
そしてそれは恐ろしいまでの苦しみや絶望を、足元のカーペットの下に覆い隠して成り立っている。
カーペットを一枚めくるとすぐに見える阿鼻叫喚。
正義とは戦争とは人とは、簡単に表裏を作り上げる。
誰かの理想が誰かの悲しみになる。

劇中に常に漂う不穏。
まるで鳥や虫の声のように、怒声や苦しみ、絶望の声が当たり前にそこにある。
ただただ美しい花々だけが真っ当にそこで咲く。

しかしやはりそんな環境は異常なのである。
異常を異常と感じなくとも、異和やずれや狂気が知れず蝕んでいく。
そんな彼らの姿を私たちは自身のことのように恐ろしく感じる。
どうすることもできなくても、異常と恐怖をきちんと感じ取れていることに小さく安堵する。

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