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●墓泥棒と失われた女神●

原題は「La Chimera」、キメラ=幻想を意味している。
1980年代のイタリア・トスカーナ地方の田舎町で墓泥棒をして生計を立てるアーサーと仲間たち、彼らに関わる人々。
それぞれが持つ幻想が美しい自然や街並みの中に見え隠れする。

新作映画なのに、古きよき映画を観たような、映画のよさがぎゅっと詰まった作品。
久しぶりに「映画を観た!」という感覚になる。
早回しや上下の反転、アクセントのように入るターコイズブルーなど、視覚効果の演出もいい。
登場人物も魅力的で、特にイタリア(役名)の可愛らしさは特筆。80年代のファッションを見るのも楽しい。

期待と楽しさもあれば、虚しさと悲しみもある。幻想のように入れ替わる。
光と闇、善と悪がキメラ(異質同体)のようにひとりひとりの中にあるということを示唆しているように思えてくる。
観終わってすぐではなく、時間が経ってからこの作品に夢中なことに気づく。幻想がいつのまにか自身にも入り込んでいたことに気づく。

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