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あこがれの喫茶人

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格好よく喫茶店を使う素敵な大人を私はひっそりと「喫茶人」と呼んでいる。 あこがれ、目指す喫茶人の姿とはどんなものか、喫茶店に通う側の目線で紹介していく連載。
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記事一覧

●あこがれの喫茶人●第3回 喫茶店は"ただ行く"もの

●あこがれの喫茶人●第3回 喫茶店は"ただ行く"もの

以前俳優の柄本明氏が、今は亡き伴侶とともにテレビ番組の取材を受けていて、行きつけの喫茶店を紹介していた。
喫茶店には毎日二人で行くという。どんなことがあっても喫茶店には必ず行く。ケンカをしていようが何しようが、喫茶店には「ただ行く」と二人で声を合わせて言っていた。
何をするでもなくコーヒーを飲みながら時間を過ごすために、ただ行く。

私が眺めて憧れていた喫茶人たちも、ただ来ているといったふうだった

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●あこがれの喫茶人●第2回 喫茶人は馴染み上手

●あこがれの喫茶人●第2回 喫茶人は馴染み上手

喫茶人の素敵だなと思うところに「馴染み方」というのがある。行きつけの店の空気に溶け込むように馴染むのである。

行きつけだからといって我が物顔をせずに入店し、お気に入りの席が空いてないとしてもさっと別の席に座る。
常連だからといって我先にということはせず、注文が決まっていても店員から声がかかるまで待つ。
店への信頼と言ってもいいかもしれない。よほど席数が多くて顔馴染みの店員もおらず見逃されているよ

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●あこがれの喫茶人●第一回 無言の気づかいは喫茶店の文化

●あこがれの喫茶人●第一回 無言の気づかいは喫茶店の文化

たいていの喫茶店では食べ終わった皿を店員が下げにくる。
これにはどういう意味があるのかご存知だろうか。三択にしてみたのでちょっと考えてみよう。

①食べ終わったら長居せずに退店してほしいから
②ひとつでも早く洗い物を済ませたいから
③サービスだから

この答えは③である。
案外①や②だと思っている方もいるかもしれませんね。もしかしたら中には①や②のためにしている店もあるかもしれない。
しかし、フル

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●あこがれの喫茶人●はじめに

●あこがれの喫茶人●はじめに

 コーヒーとはこんなにおいしいものだったのかと気づいたのは、今から9年前、冬の終わりがまだ見えない2月頃、私が35歳になる年のことだった。
 それまで喫茶店やカフェは誰かとともに甘い物やランチを食べに行くところだった。もともと紅茶やハーブティーを好んで飲んでいたというのもあり、コーヒーはランチセットで気が向いた時に選ぶくらいだった。
 感動するくらいおいしいコーヒーに出会ったのは、実際に喫茶店で働

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