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押したら引かれる

マシンガントークこそ最強の話し方!

学生の頃は本気でそう思っていました。
相手が反論する前にさらにかぶせて話す。
常に先手、先手で話を展開して
もう自分の言いたいことを言いきってしまう。
相手が喋らなくなったら勝ち!みたいな。

実際、学生の口喧嘩ってもう言ったもん勝ち
みたいな所があって理屈とか整合性とか
そんなことより強い言葉と圧力。
もう勢いと雰囲気で押し切ったら正義!みたいな。

たしかに、立て板に水のごとくスラスラペラペラと
喋られるとそれを聞いてるほうは動けない。
(これって正しいのかな?)って考えてるところに
次々と新しい話が入ってくるもんだから脳の処理が
間に合わなくて処理速度が低下しちゃう。
で、最終的に聞いてる方はあきらめちゃう。

「これって最強じゃん!マシンガントーク凄い」

こうして、友達との口喧嘩で勝つために
“いかに早く喋るか”を研究した時期がありました。
ついでにスラスラ喋れる男はモテるんじゃないかと
妄想たくましくしていた時期でした。

こうしてマシンガントークの道を進んだ私。
その先に待っていたのは嫌われ者の私でした。

マシンガントークでこっちがひたすら
一方的にやり込めるのって凄く気持ちがいい。
そのうえ口喧嘩での勝率も上がりましたよ。

でも私が「やってやった」と気分よくする一方で
相手が物凄く気分悪くなることに気付かなかった。

そりゃあそうですよね。
相手からすれば、言いたいことも言えずに
一方的に責め立てられるんですから。
それで勝手に負けた人扱いにされるんです。
誰だって気分悪くなるしドン引きです。
「こいつと話すの嫌だな」ってなりますよ。

ちょっと考えればわかりそうなことなのに
まるで相手の気持ちが分かってなかった。
自分が勝つことが最優先だったのかなぁ。

「一方的に話すことなんかよりも
相手の話をしっかり聞くほうが百億倍大事!」
と気付いたのはそこから十数年後のことだけど
それはまた別の話。

この忌まわしい嫌われ時期の私の話が
記憶の底からよみがえったのは
最近同じような体験をしたから。

最近私の保険の担当者が変わったんですね。
で、わざわざ自宅に来てくださったんです。
新しい担当者は二十代の新人ぽい男性の方。
スーツがおぼつかない爽やか好青年って感じ。

その好青年がマシンガントークだったんです。
もうひたすら覚えてきたことを言う。
一から十までペラペラペラペラ。
しかも内容は求めている情報ではない。

20分ほど聞いたところで話が少し途切れたので
「この部分はどうなんですか?」って尋ねると
そこからまたマシンガン乱射が始まる。

(あっ、これ終わらないやつだ)

好青年に悪気がないのが分かるんです。
彼は誠実に仕事をこなしているんです。きっと。
ああ、そういや私もこんな喋りだったなぁと
過去の自分の行動が帰ってきたような感覚で
ひたすら聞いていたのでした。おわり。


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