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想い出のそれ

「次郎さん、それ、買い換えないの?
なんだかもうボロボロじゃない」

先日、同僚にそんなことを言われた。
そんなにボロボロかな?と思って見たら
けっこうボロボロだったのでおどろいた。
毎日洗っているけど気付かなかったなぁ。

「なに、けっこう大事なやつなの?それ」

そう。
これはぼくの中で最大級に大事なものだよ。
なんてったって愛する嫁ちゃんの贈り物だ。

「はあ、そりゃ良かったですね・・・」

また嫁自慢が始まったと苦笑いする同僚を尻目に
ぼくの意識は過去に遡っていた。

・・・

あれは忘れもしない
嫁ちゃんと付き合ってはじめてのクリスマス。
ささやかなプレゼント交換を行った夜のこと。

「これ、開けてもいいかな?」

丁寧にラッピングされた包みを開けると
出てきたのは水筒。
スターバックスの水筒。

衝撃だった。

色、デザイン、機能性、そしてシチュエーション
全てが完璧すぎて絶句してしまった。

まずぼくは、深い緑が好き。
スリムタイプのデザインもドンピシャ。
そんでもって信頼と実績のサーモス製。
そして
好きな人がそれをクリスマスプレゼントに
これを選んでくれたということ。

「えっ、・・・」

嬉しさと驚きがぶつかり合って言葉が出ない。
自分の知らない一面を改めて見つけた気分だ。

「・・・ありがとう!毎日使うよ」

ようやく出た言葉は月並みでつまらなかったけど
贈り主の嫁ちゃんは喜んでくれた。

あれから〇年…。

まさか今も現役で使い続けているとは。
自分のことながら物持ち良すぎるだろ。

いやね、だってこれ便利なんだよ。
熱々のコーヒーを入れたら8時間くらい保温。
アイスコーヒーだったら次の日までつめたい。
珈琲愛好家にとってマストアイテムすぎるんだ。

だから職場に毎日持っていくよね。
隙間時間に一口飲むと気分が高揚するよね。
テンション上がって仕事も楽しいよね。

ランチタイムにはゆっくり飲めるよね。
最高の休憩時間が約束されるわけだよね。
身も心も休まって午後もがんばれるよね。

まあ、たまにツルっと手から滑り落ちて
ガラガッシャーンって派手な音立ててしまうけど
それでもコイツは耐え忍んでついてきてくれた。

もう戦友だよね。別に戦ってないけど。


「というわけで、ぼくの想い出の品は水筒さ」

休日の昼下がり
『ぼくたちの想い出の品は?』というテーマで
ぼくたちはのんびり雑談していた。
目を細め感心したような表情を見せる嫁ちゃん。

「嫁ちゃんは何かないの?想い出の品」

えー、わたし?何だろう・・・と悩む嫁ちゃん。
やがて結婚指輪とかウエディングドレスとか
結婚式関連のアイテムをいくつか挙げたけど
ちがうんだ。
そういう“いかにも”なモノじゃないのがいい。

「じゃあ、わたしはタンブラーかなぁ」

タンブラーとは蓋つきのデカいカップの総称
みたいなもので、ぼくたちは同じデザインの
タンブラーを愛用している。
これまたスタバで購入したやつだ。

「ぼくが水筒で、君がタンブラー?」

「かぶってるけど別にいいでしょ。事実だし」

嫁ちゃんが自分用に買ったタンブラー。
ぼくがそのデザインに惚れこんでしまい
「どこで買ったの!?これ欲しい!」と
即同じものを購入したという経緯がある。
(ぼくはどうやらスタバに弱いらしい)

このタンブラーは購入して2年程度だけど
現役でふたりとも愛用しまくっている。
気分の上がるアイテムはとても重要だ。

「なんか、似たような結果になったね」

「まあまあ、夫婦は似るって言うから」

今日も穏やかな休日だった。おしまい。


この記事は「#仲良し夫婦サークル」の
企画参加記事です。

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