伝え方の話【No.6 最初の一言】
優秀な兄がいたから、私はゲームが好きでした。
(ここで言うゲームとはプレイステーションや
ニンテンドースイッチなどのことを指します)
二人で協力したり、対戦するゲームは確実に
エキサイトします。たいへん面白いものです。
私は説明書を熟読するタイプの子供でしたが
熟読した上でさらに、兄に聞いていました。
「主人公はどうして戦っているの?」
このとき、兄は説明書には乗っていない文言
つまり自分なりの解釈を加えて私に語ります。
「~だから、戦っているんだよ」と。
予想を上回る答えを聞いた私の瞳は
ランランと輝いて、主人公に感情移入します。
(そうか、主人公は〇〇だから戦うのか)と。
・・・
「つかみ」という言葉をご存じでしょうか。
お笑い芸人さんがテレビで言っているのを
聞いたことがある人も多いかもしれません。
つかみとは、相手の関心を惹き付けること。
誰かに何かを伝える場合、必ず行うことは
「つかみ」を完璧に遂行することです。
たとえば学生時代のクラス替えの挨拶。
私の友達はこんなことを宣言しました。
「俺、卒業したらドラマーになるから」
クラスはザワつきました。
私も、マジかよ!とシビれました。
高校一年生が掲げるにはカッコ良すぎる宣言。
これ以上ない「つかみ」をした彼は
クラスの関心を見事に惹き付けました。
その後彼は有言実行することになりますが
それはまた別の話。
このように効果的に「つかみ」ができれば
周りの人達はおのずと聞く体制になるので
恐ろしいくらい、話を聞いてくれるのです。
・・・
今回の話、一体何を言いたいのかというと
最初の一言に全身全霊を込めようってこと。
最初の一言こそ最初にしてラストチャンス。
話を聞こうとしてくれている相手を前に
「ええと、こんにちは~」とか
「いい天気ですよねぇ~」なんて
茶を濁している場合じゃないんです。
では、最初の一言に何を言うのがベストか?
それはもちろん、話す相手が聞きたいこと。
たとえば一対一の場合。
冒頭で幼い私が「主人公の動機って?」と
兄に尋ねましたよね。
それを受けて兄は動機を教えてくれました。
しかも、私の想像力を超刺激する言い方で。
たとえば一対多の場合。
私の同級生が「俺はドラマーになる」と
皆の前で宣言しましたよね。
学生という『型』の破壊を皆が求めていた所に
彼は見事、退屈な自己紹介を壊してくれました。
どちらの場合も最初の一言が全て。
ここで的外れなことや
誰も期待してないようなことを言う人は
「なんだかつまらない人」認定されてしまい
関心を持ってもらえません。
学生時代、人気者の生徒っていたでしょう。
先生にも一目置かれてよく話しかけられたり
休み時間には自然と人が集まるような生徒が。
彼らの多くは総じて
最初につまらないことは言わない。
意識的か、はたまた無意識かは分かりませんが
周りの人たちの期待を満たす発言をしています。
もちろん嫌々ではなく、自分がそうしたいから。
そういう人の話をみんな聞きたがるんです。
・・・
生まれ持ったセンスや気質とかで
なるべくして人気者となる人には
私たち凡人は到底、かないません。
だからこそ最初の一言に全てを賭けるのです。
話す相手をリサーチした上での会心の一言を
全身全霊を以て叩き込むんです。
センスは知識で補えます。
そこに反復練習と実行力もあればモアベター。
ともすればセンスだけの人をも上まわれます。
私たちはAIではなく人間なので
何かを伝えるときの最後の決め手は熱量です。
その熱を、いちばん最初に最大限にぶつける。
相手に関心を持ってもらうには常に全力勝負。
全力で相手に関心を向けることができてから
ようやく話を伝えるスタートラインなんです。