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ロバート・グラスパーのライブで出会ったDJ

2020年、特に楽しみにしていたライブが2つあった。1つはビルボードライブ大阪にやってくるロバート・グラスパー。もう1つは、東京JAZZのハービー・ハンコック。どちらもコロナの影響で中止になった。

ロバート・グラスパーのライブは何度か行ったことがあった。2回目に行ったのは2019年1月の、これもビルボード大阪だった。どんな曲を演奏していたかは、もうさっぱり覚えていない。薄く記憶に残っているのは、何かの曲の最中ずっと、彼が赤ワイン?を飲んでいたことだ。

彼は最初にピアノでテーマを弾くと、すぐベースにソロを譲った。そしてしばらくステージ袖に消え、またピアノの前に戻ってきた。そこからさらに少しして、スタッフの方がロバート・グラスパーの元に大きなワイングラスを運んできた。彼はそれを飲みながらピアノには一切触れず、その間にベースとドラムの長いソロは一周していた。

やがて、もう一度ピアノでテーマを弾いて、その曲はおしまい。演奏はどれもこれも素晴らしかった。

バンドメンバーにはもう1人、DJを担当するジャヒ・サンダンスがいた。

きっと彼も演奏に参加していたはずだけど、最初から最後の1曲まで、全く記憶には残っていない。この日のライブ、もちろん僕のお目当てはピアノを演奏するロバート・グラスパーだったからだ。

演奏をすべて終え、アンコール。この日最後のステージは、DJのジャヒ・サンダンスが主役の1曲だった。

ピアノ、ベース、ドラムが伴奏に回ると、女性の声が広がった。

「音楽は世界を平和にする」
「音楽は心を和ませる」
「アートは音楽」

日本語の、詩の朗読を使った音楽だった。

ジャヒ・サンダンスがスクラッチを加える。ただの文章の朗読が絶妙に伴奏に溶けていった気がした。久々に鳥肌が立った。朗読を音楽に合わせられるというのが衝撃だったし、しかも日本語だから言葉の意味が分かる。もしこれが英語だったとしたら、僕はあそこまで感激できなかったと思う。間違いなく、日本の、あの場所でしか聴くことのできない演奏だった。

この演奏が聴けただけで、あのライブに行った価値があった。

それ以来、DJやラップの演奏を色々と漁れるようになった。やりたいことが、なんとなくわかるようになった気がするからだ。彼のあの演奏のおかげで、僕の音楽の守備範囲はめちゃくちゃ広がった。結局、今思い出してみても、あの日のライブは、アンコールのときに感じた何かぼんやりとした感動みたいなものだけしか残っていない。

2020年、特に楽しみにしていたライブが2つあった。1つはビルボードライブ大阪にやってくるロバート・グラスパー。メンバーには、ジャヒ・サンダンスもいた。彼の演奏を、もう一度日本で、生演奏を目の前で聴きたかった。状況が許すようになったら、彼にはぜひまた絶対に日本に来て演奏してほしい。

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ジャヒ・サンダンスのツイッター。うまく埋め込みができなかったのでそのままで。
https://twitter.com/jahi
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