プリン

 テレワークで会社に出社しない日々が始まって、もう一ヶ月。
自宅に持って帰ってきたパソコンで仕事をして、数日に一回近くのスーパーへ行って、ゆっくりお風呂に入って、しっかりパックして眠る日々だ。
 快適だけど、味気ない。そう味気ない。塩をかけ忘れたゆで卵をずっと食べているみたいな日々だ。ぱさぱさで、塩味がほしい日々。
 毎日会うのは、パソコンの画面の中の同僚たちくらいだ。世の中でリモート飲み会なるものが流行っているが、田舎町から都会に引っ越して二年目の私にそんなお誘いはないし、私も誰かを誘う訳でもない。

 外出するのは、数日に一回のスーパーくらいだ。きょうスーパーへ向かう道中、カップルとすれ違った。手には二人で買い物袋が一つだけだ。一人で行け一人で。密だ、密だ。と羨ましさの色を帯びた静かなる批判をカップルへ浴びせ掛ける。
 家に帰ってきて、荷物を置いて、手をしっかり洗う。マスクはハンドソープで洗って、紐の部分をハンガーに引っ掛け、エアコンの風に当てて部屋干しする。
 そして、鏡に映る私は、すっかりプリンだ。
 サロンになんていけない。そもそもやっていない。自分でカラーリングしようかと悩んでいる間に、世の中の自粛ムードが解消されそうな気配が出てきた。
 一人で持ち帰った買い物袋からプリンを取り出した。自分の頭を見ていると食べたくなったのだ。まだ外出ができそうだった、緊急事態宣言前にサロンに行っておけばよかったなと、後悔する気持ちを、プリンの甘さでかき消す。プリンを食べて、私のカラメルはまた少し増えていくのだ。

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