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今こそモジュール建築を考えよう

こんにちは、つじしゅんです。

海外の建築ニュースを要約しお届けする、

建築Reading Part14です

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建築業界の方であれば知っているように、建設はコストがかかり、果てしなく時間のかかる作業です。

そして、天候やその他の予期せぬ状況、計画の不備、人員の少なさ、またはその他の原因によって遅延は頻繁に発生します。

大規模な建設プロジェクトは、建設される前であっても、プロジェクトが遅延したり、建設地の近くに住んでいる人や働いている人に不便をかけたりすると、プロジェクトに対する社会的な認識に悪影響を及ぼすことがあります。

さらに、プロジェクトの中には、一般的にかかるであろう建設期間よりも短い時間で建設する必要があるものもあります。

(私自身、施工者にせっつき、めちゃくちゃな建設スケジュールで作業してもらった経験が何度もあります。。)

ありがたいことに、建設時間を大幅に短縮したい人のためのソリューションが存在します。

モジュラー工法とは?

モジュール建築研究所(Modular Building Institute)によると、

「モジュラー工法とは、建物が制御された工場の条件の下で、同じ材料を使用して、従来の施設と同じ基準で約半分の時間で構築されるプロセスです」 

モジュラー工法には、いくつかのタイプがあります。

・ Volumetric modular construction(ボリュームモジュラー構造)は部屋の全体、または部屋のセクションが一つのボリュームとして工場で建築される方式。日本ではまだ少ないですが、一部のハウスメーカーで採用されていたり、海外ではホテルのような建築にも採用されています。

・ Panelized construction(パネル化施工)とは、工場で内壁パネルや外壁パネルを製作した後、建築現場に搬送して配置する工法で、建物の残りの部分は現場で施工されます。

モジュラー工法のメリットは?本当にコスト削減できる?

モジュラー工法はコストを節約することができますが、それはその主な利点ではありません。

モジュラー工法の主な利点は、時間の節約と投資に対するより速いリターンです。

モジュラー工法は、敷地の準備(地盤改良、基礎工事など)と同時に部材の製造が可能になるので、建築の構造を構築するためにかかる総時間を大幅に削減することができます。

多くの場合、現場の準備が整う頃には(基礎の水平化、配管の設置、コンクリートの打設など)、工場で建てられたモジュールを設置する準備ができています。

例えば、モジュール式のホテルは、従来のホテルよりも30%~50%早く開業し、収益を上げることができます。

その他の利点としては、労働者の安全性の向上(不安定な高所での作業や管理の行き届いていない環境での作業とは対照的に、労働者全員が安全で管理された環境で作業している)、生産性の向上、スケジュールの確実性の向上(モジュラー建設では、変更命令の遅れや天候の遅れが大幅に減少します)、コストの予測可能性の向上などが挙げられます。

モジュール建築はサスティナブルか?

SDGsとして定められている通り、サスティナブル(持続可能)であることはこれからの時代に欠かせない基準となるでしょう。

SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。

モジュラー工法は、いくつかの理由から、従来の工法よりも持続可能な選択肢と考えられています。

柔軟性および再使用 モジュール式の建物は分解でき、モジュールは新しい使用のために移設されるか、または改装され、原料の需要を減らし、新しい必要性を満たすために費やされるエネルギーの量を最小にします。

材料の廃棄物を減らす 工場で建築する場合、材料のリサイクルや在庫管理、建材の保護などにより、無駄を省くことができます。

モジュラー工法を使えるのはどんな建築?

結論からいうと、どのようなタイプの建物でもモジュール式に構築することができます。

しかし、そのためには、建物はモジュール工法の採用を前提として考えられ、設計されていなければなりません。

モジュール建築は、時間がない場合やスペースが限られている場合によく選択されます。

例えば、ヨーロッパでは、都市の土地は非常に頻繁に道路や他の建物によって制限されているので、在来の手法で建物を構築する(材料や労働者を長時間現場に持ってくる)ことは法外である可能性があります。

モジュラー建築では、クレーンを使い、より短い時間で建物を建てるための人員がはるかに少なくて済みます。

また、都市部の狭い場所では、騒音公害の低減も大きなメリットとなります。

モジュール建築のデメリットは?

デメリットというと語弊があるかもしれませんが、モジュラー工法は在来の建設より計画の流動性が低いです。

在来の建設では、着工後にも設計変更が行われる流動的なプロセスとなっています。

例えば、在来の建設では地業という地盤改良、根切、土留め、基礎工事といった工事期間に、建物の構造に関わらない部分について検討、変更する場合が多々あります。

対して、モジュラー工法では、着工するとすぐに建築の製造が始まるため、前もって設計を細部まで完了しておく必要があります。

先ほどの例と同様、地業の期間について考えると、現場で地業工事をしている期間でも、モジュラー工法の場合は工場で建設が始まっているということになります。

こういった在来の建設とは違う点が多いため、モジュラー工法を採用する場合はその設計プロセスごと、モジュラー工法用の設計プロセスとして確立する必要があります。

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今回は長い文章となってしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。

実のところ、私自身、モジュール建築についてネガティブな印象を抱いていました。

「設計の自由度が無く、つまらない建築だ」とか、「組み合わせるだけなら設計者はいらない」なんて思っていました。

ですが、モジュラー工法のメリットはとても大きく、これからの時代に求められるものであることを痛感しました。

もちろん、在来の建設手法が悪い、なんていうつもりはなく、モジュラー工法の建築をもっと取り入れても良いのかな、と思うということです。

モジュラー工法に特化した建築家、というのもこれから求められる建築家像の1つなのではないでしょうか。

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