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「運動靴と赤い金魚」と小児科医

こんにちは。小児科医のcodomodocです。神経疾患、神経発達症、心身症などの診療をしています。最近はマルトリートメント(不適切な養育)な環境から発達性トラウマ障害をきたした子ども達への医療的な関わりについて勉強をしています。

うちの病院の院内報に毎月書いているコラムです(800字前後)。診療をしていて感じる、とりとめもないことを書いています。最近は映画の話が多めかな。今回は2023年の10月号です。

イラン映画はお好きですか? イラン映画には子どもが主人公の作品が多く見られます。政府の厳しい検閲があるため、それに通るために子どもが主人公の作品を作るのだそうです。僕は小児科医だからという訳ではありませんが、グーニーズやETなど子どもが主人公の映画が大好きなのでイラン映画も好きです。今回はマジッド・マジディ監督の「運動靴と赤い金魚」(1999)を紹介します。主人公のアリは小学生。足が速く成績も優秀な男の子です。家のお手伝いで(注:映画でイランの子はいつもお手伝いをしています)、靴屋に修理してもらった妹の靴を受け取り、パンを買い、最後に寄った八百屋で靴をなくしてしまいます。当時のイランは大人(特に父親、先生)が子どもに対して非常に厳しく体罰が当たり前なので、アリは本当のことを言えません。そこで彼はバレないように自分の靴を妹と二人で使う作戦を考えました。まず妹がアリの靴を履いて登校し、下校してからアリがその靴を履いて登校する作戦です。イランは男女共学ではなく、妹の学校が終わる頃にアリの学校が始まるのです。しかし、そう上手くはいかずアリは遅刻ばかりで先生に叱られ、とうとうバレそうになりますが、3位に入賞したら運動靴がもらえるマラソン大会に出ることになり・・。

外来で親御さんから子どもが嘘をつくことについて相談を受けることがあります。そんな時、僕は嘘をつくにはその子なりの事情があるのでしょうと話します。アリのように本当のことを言うと叱られるから嘘をつく子がいれば、褒めて欲しくて自分を良く見せようと嘘をつく子もいます。嘘をついたことは悪いことですが、その奥の子どもの気持ちを考えることが大切だと思うのです。子どもたちは日々、様々な困りごとを起こしますが、そんな困りごとが起きた時こそ絶好の寄り添い時なのです(それがなかなか難しいんですけどね)。「嘘=悪」は一旦横において話を聴いてみてほしいのです。

さて、果たしてアリは3位になれたでしょうか。彼の頑張りをぜひ観てみてください。


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