Cocozen始動!(1/3)─それぞれの”ここ”から全体をよくするためのプロジェクト、Cocozenとは?
去る2022年10月13日、隅屋輝佳(一般社団法人Pnika)、佐竹麗、真鍋薫子(ともに、一般社団法人たまに )が立ち上げたプロジェクト「Cocozen〜それぞれの”ここ”から全体をよくする〜」のキックオフディスカッションを行いました。
キックオフから早くも3ヶ月近くが過ぎてしまいましたが、本日より、このnoteを通じてみなさんに、Cocozenの概要や活動内容について、順次レポートしていきたいと思います。
初回となる今回から第3回目までは、佐竹麗が、このプロジェクトの概要(今回)や本プロジェクトの当面のテーマである「出産・子育て世代を取り巻く社会構造」について(第2回)お伝えした後、キックオフイベント当日の様子について(第3回)レポートします。
Cocozenとは
「Cocozen〜それぞれの”ここ”から全体をよくする〜」は、それぞれが当事者として関われる場所("ここ")から、当事者にとっても社会全体にもとってもよりよい変化をもたらせるようなアプローチや取り組みを、試行し広げることを目的とするプロジェクトです。
Cocozenの目的と基本的な考え方
私たちの営みはお互いに複雑に交わりあい、影響を与えあっています。そのため、よかれと思ってしていることが全体にとってはマイナスになってしまっていたり、善意の行為が互いにその効果を打ち消し合ったりすることも少なくありません。
そうした意図しない足の引っ張り合いをできるだけ避けて、それぞれの努力が部分と全体双方にとってよい効果を生むようなwin-winの構造と関係性の中で、それぞれの場所から社会全体を望ましい方向へとアップデートさせていく必要があると、私たちは考えています。
このプロジェクトの目的は、それぞれの場所から全体をよくするためのプロセスを構築し、試行、実践すること。キーワードは、「全体像の可視化」と「全体と部分の接続」です。
私たちはそのために、「因果ループ図」という、社会構造とその構造に内在するストーリーを可視化するシステム思考の代表的な描画法を用いて、全体像を捉えた”マップ”を描き、みなさんと共有します。その上で、それぞれが当事者性を持って関わっている領域についての課題感や改善策について検討し、適時"マップ"自体もアップデートしながら、そこここに生まれるアイディアの芽を、育て、社会に還元していきたいと考えています。
立ち上げの経緯
私たち3人は、専門とするフィールドは異なれど、ともに、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科でシステム×デザイン思考とシステムズエンジニアリングをベースに、イノベーションと仕組みづくりのノウハウを叩き込まれた同窓生。
アジャイルガバナンス(後述)を推進する隅屋輝佳が、2022年2月に一般社団法人たまにが発表したレポート「子どもを産み育てる社会構造に関する調査分析レポート」(図1)を見かけたことが、プロジェクトを立ち上げるきっかけとなりました。
「出産・子育て世代を取り巻く社会構造」を起点にしたファーストトライアル
そんな経緯もあり、私たちがプロジェクトを起動するにあたり最初の題材に選んだのは、「出産・子育て世代を取り巻く社会構造」。
このレポートはもともと、2021年に一般社団法人たまにが、「ムーンショット・ミレニア新たな目標検討のためのビジョン策定」における、「『望めば誰でも安心して子供を産み育てられる社会』の実現に向けた具体的目標課題に関する調査研究」チーム(チームリーダー吉田慎哉氏)からの委託を受け、チーム吉田とともに描いたもので、チーム吉田の各メンバーと一緒に、メンバーの一員だった私(佐竹)も膨大なリサーチとディスカッション行い、書き上げたものです。
Cocozenのアプローチ
ベースとする3つの概念
このプロジェクトを進めていく上で私たちが大切にしているのは、「システム思考」と「オープンシステムディペンダビリティ」、そして、「アジャイルガバナンス」という3つの考え方です。
「システム思考」は、複雑な構造を見える化しストーリーとして捉える力が抜群。他方「オープンシステムディペンダビリティ」は、変化の時代にシステムを機能させるための世界の経験値が集積されたもので、日本では、一般社団法人ディペンダビリティ技術推進協会が提唱、推進しています。
もうひとつは、「アジャイルガバナンス」。「アジャイルガバナンス」は、「オープンシステムディペンダビリティ」をガバナンスの文脈に取り込み次世代ガバナンスのアプローチとして提示しているものです。
それぞれの概念について、簡単な解説の記事を用意していますので、気になる方はぜひご一読ください。
6つの全体プロセス
Cocozenでは、前述の考え方をベースに、全体のプロセスを、現時点で下記のように定義しています(図2)。
実現したい未来のイメージをゆるやかに共有する
社会構造と全体の課題感を共有する
社会構造全体を見ながら、それぞれの場所で、ほしい状態と現実とのギャップを埋める介入策を検討・実行する
各施策から生じた変化や外部環境の変化を捉え、社会構造の仮説をアップデートする
個別施策の効果や影響、全体の変化を踏まえて各施策をアップデートする
プロセスを改善しながら、大小のループを回し続ける
こうしたプロセスは、言葉にするのは簡単でも、実行するのは難しく、膨大なエネルギーと長い時間が必要なものです。けれど、「社会構造の全体像」を共有し、その上で各個別施策を設計・実施することは、この停滞して久しい日本社会にも大きな変化をもたらすに違いないし、取りも直さず、個々の改善が明日の社会全体を照らしうる、より明るい未来を作り出すという期待感を共有できることそれ自体が、とてつもなくパワフルだし大きな価値がある。
私たちはそう信じて、よりすぐりの仲間たちに集まってもらいこれからのプロジェクトについてオープンに議論するための、キックオフを企画したのでした。
第2回につづく
文:佐竹麗