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5月24日 ZION「Another Mountainphonic†」キリスト品川教会公演を観て

かつて私はNICO Touches the Walls というバンドが好きでした。
しかし2019年11月に急なバンド活動終了宣言が公式Twitter(現在のX)に上がり、それは事実上の解散発表だった。その件に関しては、ただの報告だけで終わらせるのではなく、最後くらいライブやるとかなんとかしたら良かったのにとまぁ今もモヤっとするときがある。ただ、2010年代後半のバンドシーンや彼らが置かれていた状況を考えるとバンドの継続が難しかったのはわかるし、作詞作曲を任されていたフロントマン光村龍哉の負担はかなり大きかったのも理解している(つもり)。

そんな光村が2020年に新たに始めたバンド「ZION(ザイオン)」 は拠点が北海道の十勝。で、全てを自分達で行っている。まずスタジオは古民家をリノベーションして作った。曲作りは光村ひとりで行ってはいない。音源だけではなく、CDの歌詞カードやパッケージのデザイン、マーチャンダイズのデザインと制作、ライブのブッキング等も多分ぜんぶやってる。CDはレコード店に置いてないからネット注文かライブ会場で買うかの二択。もちろん事務所には所属してないし、全国区の雑誌など大きなメディアのインタビューにはほぼ応じず。北海道のFM局やタウン誌には出ているらしい。

( ↑ ZIONの日常がわかります)
このやり方が良い・悪いは別として、これが彼がいる現在である。


前置きが長くなりましたが、ようやく私にもZIONのライブを観る機会がやってきました。

2024年5月24日。場所は東京・品川にあるキリスト品川教会。場所が場所なので、会場に入った時点から厳かな雰囲気に包まれます。


正直に書いていきますが、ライブが始まっても暫くの間は全っ然音が耳に入ってこなかった。聴いてて胸がカーッと熱くなることもない。前バンドのファンだったとはいえ、完全部外者が来ちゃったかのようなアウェイな感じが拭えない。一曲歌い終わったら次に歌う曲が「Mr.ECHO」や「BrokenYouth」でもない。その事実はやはり寂しく、もう光村がそれらを歌うことはきっと「ない」ことをショックというより、どこかクールに見ていた。しかも、このバンド原曲どおりに演奏なんてしやしないし(呆れ気味)!「アコースティックライブらしい」とは聞いてたけど、中にはかなり曲の原形を崩しているものもあって、アレンジの域を超えているのではないか?と思うほど。初めてライブを観る私としては脳内「???」だし、時に睡魔もやってくるし。

だけど、ある瞬間に思い出した。「音楽の中では自由だぜ!」とか「いっぱい音楽と遊びましょう!」って良く光村がライブで言い放っていたことを。そして気がつく。「おや?あの時と同じことをやってないか?」。すると、あちこちにとっ散らかってた点がだんだん一本の線に繋がっていった。

光村の「自分の音楽を通して何をリスナーに伝えたいのか?」という姿勢は全く変わってなかった。それは、私が彼の前のバンドに強く信頼を寄せていた部分でもあったから素直にとても嬉しかった。そして、バンドが変わろうが、メンバーが変わろうが、光村龍哉さんは光村龍哉さんなのだとZIONのステージを観てハッキリしたことで、喉につっかえてたものが消えた。


ただNICO Touches the Walls というメジャーの世界にいて、日本武道館でワンマンを3回やったり、野外ロックフェスの一番大きなステージに立ち続けたバンドが出した最後のアルバム「QUIZMASTER」が、ZIONの伏線であることは忘れたくない。大人の事情(お金の問題)もあるのにそれを無視してシングル曲は一切入れず、やりたいことを貫いた(しかも、この事実を最後に出演した某フェスのステージで光村は話しました)姿勢だけは、もっと評価されるべきだ。音楽が好きな人、日本のポップミュージック、特にバンドが好きな人は知っておくべきだと思う。

いずれZIONから好きになって、光村の経歴を知っていく人も出てくると思うから、そういう人達のためにもバンドの最後を知っているひとりとして、敢えて最後に書いておきます。


ステージ上には終始穏やかな空気が流れていて、そういう環境に光村が今いることも、彼が20歳くらいの頃のライブを観てる者として、どこか感慨深さがあった。

ZIONのライブの後、珍しく人と飲みたくなった。そこでの話題で上がったことは、音楽の世界では今やもうメジャーもインディーズも関係ないのかも、と。才能のある人が、その才能を存分に生かせる環境に身を置くことがベストなのだと思った。


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