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【11月のエッセイ:aikoの「ラジオ」を聴いて】

遡ること1990年代の後半。
まだインターネットが身近なものではなく、もちろんスマホもSNSもなかった当時は、ラジオや音楽雑誌に今よりもっと情報発信の力があった。
テレビよりもアンダーグラウンドなその世界では、リスナーとDJ、読者と編集部の距離感がすごく近かった気がする。
私にとっては、学校や家庭以外で外の世界とつながりが持てた唯一の居場所。刺激的であたたかかい。

ラジオに関して書くなら、毎晩聴いてたお気に入りのラジオ番組があった。NHK FMで放送されていた「中村貴子のミュージックスクエア」と言って、その頃、音楽好きな人だったら、知らない人はほぼいないはずの伝説のラジオ番組。GRAPEVINEをはじめ、この番組を通してたくさんのロックバンドやシンガーと出会ったのだ。

そしてaikoの「ラジオ」である。

先述したとおりラジオっ子だった私は、この曲を涙なしでは聴けなかった。

だって、聴いていくと、歌詞に《明日は学校あるけど 仕方がないの眠れないの あの曲が流れやしないかと何度も 胸が動く》って…ちょっと待って、これ、私のことじゃないか。

毎日のように友人関係で悩んでいたけれど、好きな曲さえあれば、なんとか学校に行くことができた。そんな風に、ラジオを支えにしていた16歳の私に、聴かせてあげたくなって、久しぶりにおいおい泣いてしまった。


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