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その溢れ出した水の流れで心地よく泳いでくれるような、止まればまた、手を振って戻ってきてくれるような、そんな温かさが、欲しいんだ。




タクシーの中窓から見えるマンションの光、静まり返った深夜の金曜日、雨の音が鼓動を落ち着かせる。
こんなにも欲してたのに知らないふりしてこんなにも欲してたから遠くにあったのかもしれない。
どこかにあるんじゃないかって本当は見逃してしまってるだけなんじゃないかって何度も何度も探したんだけど、沢山歩いているはずなのに同じ場所に着いてしまう。
広くなったダブルベットは寂しいはずなのに心地よかった。



人間らしいってなんだろう。
面倒くさくて作り笑いしてしまうのも、仲間外れになりたくなくて自分を殺してしまうのも、この人のプライドを傷つけないようにって言葉を飲み込んでしまうのも、自分の自信をつけるために人の悪いところばかり探してしまうのも、ぜんぶ、ぜんぶ、わたしがわたしらしくなるために踠いてやっていること。
本当はこんなんじゃないって言い聞かせて過ごして、『当たり前の日常』にしている。
背伸びしたって変わるのは外見だけで、誰も見てないところでかかとを地面につけたとしても、見えないところで誰かは見ている、そんなもの。
わたしがわたしのままいたくて、あなたの隣を選んだはずなのに、あなたの隣の大きさに合わせるようにわたしはそこへ収まりに行く。
それが心地いい人もいるけれど、すぐ居心地が悪くなってしまう。

重い腰を上げてまでやること?
『リスク』を負ってまですること?
そんな質問にも笑えてしまうほど、何もないって思う。
だとしたら、わたしたちってすごく自由だ。自由なんだ。
無責任に聞こえてしまうかもしれないけれど自由も自然と落ちてくるものではなくて、望まないと手に入らないものなんだよ。
自分を受け止めてもらうことってこんなにも怖くて、でも抱きしめられた時、曝け出すことができた時、こんなにも嬉しい。



時々、ダムから溢れ出してしまうときもあるけれど、ダムが壊れたわけではない。
その溢れ出した水の流れで心地よく泳いでくれるような、止まればまた、手を振って戻ってきてくれるような、そんな温かさが、欲しいんだ。





Coco.






#エッセイ #コラム #polyhedra

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