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羊が眠るとき

まだ彼は眠っている
深い安らぎの奥にいる

明大前駅の改札で「彼」と待ち合わせた
照れたような笑みを浮かべて
「彼」は手を振った

井の頭線で吉祥寺に向かった
降り立った先では
真理屋や孤独屋、鏡屋が繁盛していた

恩賜公園の湖を一周して
虫の音が響いてきた頃
「彼」が手を握ってきたので
そっと握り返した
そうしたら
彼が目を覚ました

途端に雨が降りだした

ざんざん注ぐ雨粒が
瞳に乱反射して
紫陽花の花びらのような
グラデーションを描いて
鮮やかに彼は「彼」になった

これからは彼の番らしい
等しいことが正義ならば
そうあるべきなのだろう

「彼」は眠っている。
果てない迷宮の奥にいる。
彼に祝福を!
「彼」にオキザリスを!
喜べ、これが現実だ

私は貴方が誰であれ
愛する他ないのだから

#詩 #現代詩 #半分ノンフィクション

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