【エッセイ】 存在する。死しても。
私が幼い頃、父は私を寝かしつけるため、即興で作ったお話を聞かせてくれた。布団に入った私の隣、床にごろんと寝そべり、片肘をついて、私に向かってぽつりぽつりと思いついたものから次々に口に出す。それは、私だけに与えられる父そのもの。私は、その時間が大好きだった。しかし、毎度しばらくすると、父はいびきをかいて寝てしまう。だからお話が最後までたどり着くことはなかった。父の声がふらふらし出すと、私は父の存在が薄れて行くようで不安になってくる。その内、片肘がかくんと崩れることもある。やが