「聞き書き」の効能
「聞き書き」とは?
「聞き書き」とは、誰かの話を聞いて、それを語り手の話し言葉でそのままで書いて記録し、手作りの活字本にする活動です。いわば、語り手と聞き手の対話(インタビュー)を通して生まれる自叙伝です。
なぜ語り手の「話し言葉」で記録するのかというと、語り手の言葉に、語り手自身のイメージが乗り移り、読む人に語り手のイメージをそのまま残すことができると考えるからです。
「聞き書き」に公式の規定はありませんが、「聞き書き」を提唱する聞き書き作家の小田豊二氏によると、「聞き書き」は、言葉という薬のはいった「目に見ない薬箱」とのこと。語り手がこころよく語ることができるために有効な言葉、すなわち薬は語り手によってそれぞれ異なります。聞き手は語りを引き出すための適切な薬である言葉を用意し提供すると、語り手は話題が尽きず元気になるという仕組み、これが「薬箱」としての「聞き書き」の効能だといいます。
例えば、学校時代の話題としての運動会の話をしてもらったとしても、「かけっこは速かったですか?」という質問からは、語り手の得意不得意によってその後の話題の展開は異なってゆく。得意な話題には大いに花を咲かせてもらっても、不得意な話題にはさりげなく別の話題に移してゆく。そして語り手が話したい元気になる話題を探し、深掘りしてゆくことでその人らしい聞き書き本が生まれます。
つまり弾む話題の内容からも、その語り手の人らしさが滲み出ると考えるのが小田氏流「聞き書き」の本領発揮といったところでしょうか。
兎にも角にも、「聞き書き」の本意は、語り手やそのご家族(読むひと)が喜ぶ、愛情こもった本に仕上げることにあるようです。
参考図書
■「聞き書き」をはじめよう /著:小田豊二 /発行:木風舎 /¥1,524
聞き書作家小田豊二氏による入門書
聞き書き作家小田豊二氏の作品のご紹介
『のり平のパーッといきましょう』(小学館、1999年)
不世出の喜劇役者・喜劇演出家、故三木のり平を聞き書きした作品。
『秋月黒田藩第十四代城主黒田長榮』(麗澤大学出版会、2008年)
黒田長政の末裔、旧「華族」」出身の黒田長榮氏を聞き書きした作品。
『聞き書き横濱中華街物語』(集英社、2009年)
横濱華僑の歴史に迫るべく、横浜中華街「街づくり」団体連合協議会の会長、老舗「萬珍樓」社長林兼正氏に聞き書きした作品。
小田豊二氏プロフィール
出版社・デザイン事務所を経て、作家故井上ひさし率いる劇団こまつ座創立に参加。機関誌『the座』元編集長。日常の編集生活業務の傍ら、30年前より「聞き書き」の活動を始める。現在、日本聞き書き学校の講師として、全国で講座を行っている。
「聞き書き」における「聞く」、「書く」、「話す」
2018年 小田豊二氏による論文(日本保健医療行動科学会雑誌より)
https://www.jahbs.info/journal/pdf/vol33_2/vol33_2_2_2.pdf
作家インタビュアーの小田豊二さん「聞き書きは私の想像を超えて広がっています」
ライター若林朋子氏(元新聞記者)によるインタビュー記事
方法と手順
語り手を探す
お話をうかがう
テープ起こし
執筆・編集
製本
必要なもの
ノート
筆記用具
テープレコーダー(ICレコーダー)
相づち
愛情
笑顔
冊子に製本にするために必要なもの
ホッチキス
原稿
製本テープ
まとめ
昨年末に小田豊二先生の「聞き書きボランティア・スキルアップ講座」に初めて参加した。そのときとそのあとの学びをまとめてみました。
聞き書き隊仲間が増えたら嬉しいなぁと思います。
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