見出し画像

2022年3月6日

今日のココ日(ココルーム日記)
今日の釜ヶ崎芸術大学の講座は「手紙を書く会」。
この時間を楽しみに通ってくれる釜ヶ崎のオッチャンも少なくない。
集まった人たちが、ずっと忘れられなかった恩人に、喧嘩別れしてしまった親友に、感謝の思いを家族に、会いたいよの言葉を亡くなったあの人に、またはずっと昔イキがってもがいてた若かりし頃の自分に、それぞれの大切な相手へ届ける手紙を書く会。
ブエノスアイレスで長く暮らしていたオッチャンが、古い友人たちにスペイン語で手紙を書いている間、さすらいのロマンチストこと慶次郎さんが、午後の穏やかな陽射しの中で誰に宛てるでもなく手紙を書いていた。
「なんかこういう風景あるよね。ヨーロッパでも南米でも」
僕は思わず声をかけた。
老眼鏡をかけペンを取る慶次郎さんは、パリの路面にせり出したカフェテラスで見かけても違和感がなさそうに思えた。
「そうかぁ?」
少し照れながら慶次郎さんは筆を走らせる。
「あかん、なんやこのペン?書いてはみたものの全然読めへんわ」
彼が握っていたのは蛍光ペン。
光に反射して書いた字がよく読めないらしい。
「あかんなぁ。今日の俺はペガサスになった気分で物語を書いてたんになぁ」
「ペガサスねぇ」
僕は優しく照っている太陽を見上げながら、天翔ける翼馬の姿を思い浮かべた。
店内の方からは、陽気な声でスペイン語の手紙を読みあげるブエノスアイレス帰りのオッチャンの声が聞こえてきた。
(書いた人:テンギョー)

画像1


現在、ココルームはピンチに直面しています。ゲストハウスとカフェのふりをして、であいと表現の場を開いてきましたが、活動の経営基盤の宿泊業はほぼキャンセル。カフェのお客さんもぐんと減って95%の減収です。こえとことばとこころの部屋を開きつづけたい。お気持ち、サポートをお願いしています