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2022年2月5日

今日のココ日「ココルーム日記」
現在開催中の大阪関西国際芸術祭ではココルームも会場として、ポーランドからの映像作品などに加え、ゲストハウスの森村泰昌さんがプロデュースした部屋や谷川俊太郎さんがこもって詩を書いた部屋を公開している。
ゲストハウス三階にある線の間と名付けられた廊下のスペースにはポーランドルーツの若手アーティストによる映像作品が置かれているのだが、その向かいに般若心経が書かれた段ボールが貼ってある。
それは2019年にあいりん労働福祉センターの取り壊しが決まり、二階の広場で野宿していた人たちの段ボールハウスが次々と捨てられていく中、ある男性が捨てていったものをココルーム代表の假奈代さんが「これはぜったい捨ててはいけない!」ととっさに回収してきたものだ。
段ボールハウスの主によって書かれたひと文字ひと文字が、書いた本人の人生を物語るかのような筆圧と丁寧さを表している。
芸術祭の前夜、この般若心経がココルームに飾られるようになった経緯を假奈代さんがキャプションにした。
今日、ココルームに展示を観にきたとある人が観終わって一階のカフェに降りてきたので、「展示はどうだった?」と尋ねたところ、その人は一瞬黙ってから感極まって涙をこぼした。
「あぁ、情緒不安定だ。私」
そう言って涙を拭きながら、でもとてもポジティブな声で「あの般若心経が素晴らしくて…。キャプションを読んで、あぁ、こんなすごい話を読んじゃった!って思って」と言った。
その人は今日、船場エクセルビルの釜ヶ崎芸術大学の展示を観て衝撃を受け、いてもたってもいられない思いでココルームにもやってきてくれたのだそうだ。
「こんなすごい展示やって、一体どんな活動してるとこなのか知りたくて来たんです」
そう言って笑った。
「でもどんな活動してるのか、ここに来ても結局全然分からなかったけど」
今度は僕たちも一緒に笑った。
「また来ます」
そう言って微笑んでその人は出ていった。
「良い一日を」
僕たちも笑顔で声をかけた。
(書いた人:テンギョー)

現在、ココルームはピンチに直面しています。ゲストハウスとカフェのふりをして、であいと表現の場を開いてきましたが、活動の経営基盤の宿泊業はほぼキャンセル。カフェのお客さんもぐんと減って95%の減収です。こえとことばとこころの部屋を開きつづけたい。お気持ち、サポートをお願いしています