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おたふく風邪が男性不妊の要因に?

 どちらかと言うと子供の病気のイメージが強い「おたふく風邪」。
大人になってかかると症状が重い、と言われることもありますよね。
思春期以降にかかった場合は男性不妊の要因になることをご存じでしたか?
今回の記事では、おたふく風邪が男性不妊の原因になる理由や予防法などをご紹介します。


おたふく風邪ってどんな病気?

流行性耳下腺炎という感染症の病気

そもそも「おたふく風邪」とはどのような病気なのでしょうか。

おたふく風邪の正式名称は「流行性耳下腺炎」といって、
ムンプスウイルスの感染によって発症する唾液腺の炎症で、
3~8月に感染者が多いとされています。

主に3~6歳の小児が感染しますが、
思春期に入ってからや成人でも感染することがあります。

もし自分が未感染の場合、周囲の人がおたふく風邪になったら油断しないようにしましょう。
感染経路としては、患者の咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことによる感染(飛沫感染)、
ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることによる感染(接触感染)があります。
 

症状と治療法

潜伏期間は2~3週間程度で、
突然の発熱、両側、あるいは片側の耳の下の腫れと痛みが起こります。この腫れ方がまるで「おたふく」のようなので「おたふく風邪」と呼ばれているのです。

症状のピークは発症2日以内くらいで通常1 ~2週間で症状が軽快しますが、まれに合併症を起こすことがあります。

成人が感染すると小児よりも症状が重くなる傾向や、
感染しても症状が現れない不顕性感染が30%程度ある
と言われています。
症状がなくてもウイルスを排出しているので感染力がある状態です。
 
おたふく風邪に特別な治療法はなく、解熱鎮痛剤の処方など症状に応じた対症療法が行われます。
 

男性不妊の原因になる理由

精巣炎を引き起こす可能性

なぜ耳下腺炎であるおたふく風邪が男性不妊の原因になるのでしょうか。

それは、思春期以降におたふく風邪にかかると合併症として精巣炎(睾丸炎)を起こす可能性があるためです。
 
これはムンプス精巣炎と呼ばれており、
炎症のために精子を作る働きが低下します。
最悪の場合は無精子症になってしまうことが知られています。

ムンプス精巣炎にかかると数カ月から1年後に精巣が萎縮する可能性があり、両方の精巣が萎縮してしまうと無精子症になってしまうのです。


ムンプス精巣炎は片方に起こることが多いのか、それとも両方に起こりやすいものなのかを調べた研究によると、
複数の研究報告から集計した609人の検討では、
片方のみ精巣炎になったのが82%、両方ともは18%であったと報告されています。
つまり、ムンプス精巣炎は片側のみに起こることのほうが多いということですね。

しかし「炎症を起こしたのが片側なら、もう片方があるから安心」なのかと言えばそうではありません。
反対側の睾丸にも炎症が影響を及ぼし、精子の数が減る「乏精子症」や精子の運動率が悪くなる「精子無力症」になることもあるので油断は出来ません。
 
 

ムンプス精巣炎にかかった後は


もしムンプス精巣炎にかかった後に、
精子数や運動率などの精液所見が悪くなっても、
数カ月から1年程度で改善傾向にあることが多い
ことがわかっています。

その一方で、12~15ヶ月後でも80%の人は乏精子症、精子無力症の所見が継続していたとの報告があります。
精巣炎にかからないに越したことはありません。
 
 

無精子症はどのくらい続くのか

無精子症になった場合は「一生子どもができない」と思う方もいらっしゃるようですが、そうとは限りません。
 
本当に無精子症になって精液中に精子が見つからない場合でも、
TESE(精巣内精子回収術)と呼ばれる技術で精巣内から精子を回収する方法があります。

これは男性不妊治療を行っている施設で実施されています。
ムンプス精巣炎後の無精子症の場合、
他の原因の非閉塞性無精子症より精子の回収率が高く
顕微授精で妊娠が期待出来るという研究結果があります。
 
 

おたふく風邪による男性不妊を防ぐために
 

おたふく風邪が原因の男性不妊の予防で出来ることは2つあります。

1つ目は、精子凍結することです。
ムンプス精巣炎にかかってすぐの場合なら精子を凍結する方法があります。炎症が起きた直後であれば、まだ精子は出ているためです。
もしも造精機能が維持されていたり、経過観察しているうちに無精子症が改善されたら凍結した精子を破棄すれば問題ありません。
 
2つ目は、ワクチン接種を行うことです。
現在は日本小児科学会によって1歳と小学校入学前の2回の任意接種が推奨されていますが、成長と共に抗体が低下する症例も報告されています。

日本ではおたふくかぜワクチンの接種率は約30~40%と半分以下ですので、接種していない人の方がたくさんいることになります。

子供の頃のことなので、自分で記憶がない方も多いのではないでしょうか。母子手帳に記録が残っているので自分の親に尋ねるか、抗体検査を受けて確認しましょう。

その結果、抗体価が低く免疫がないという結果が出れば、ワクチン接種をおすすめします。1回目の接種後、28日以上あけて2回目の接種を行います。

値段は統一されておらず3,000~8,000円程度と医療機関によって様々ですが、接種費用の助成をおこなっている自治体もあります。
助成額は自治体によって違いますので、お住まいの自治体に確認してみましょう。
 
 

まとめ

おたふく風邪が男性不妊の要因になるのか、かかった場合に出来ることはあるか、おたふく風邪による男性不妊の予防法についてご紹介しました。

ムンプスウイルスの感染によって起こる精巣炎が原因で無精子症になった場合、男性不妊の要因となります。
しかし、経過観察するうちに回復してくる例も多く、TESEと呼ばれる方法で精子を回収して不妊治療することも出来ます。

自分がおたふく風邪にかかったかどうか・予防接種を受けているか確認し、もしどちらも当てはまらない場合はワクチン接種を受けることをおすすめします。自治体の助成も上手く活用して、おたふく風邪にかからないようにしましょう。
 

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