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悩ましい不妊治療の病院選定。知っておきたい選び方のコツ。

こんにちは。
今日は、皆さんが悩むであろう、「医療機関の選び方」についてです。

これから不妊治療を考えている方にとっては、どの基準で医療機関を選ぶのかは悩ましいし、また既に治療をしている方の中には、転院を考えている方もいるかもしれません。

そこで今回は、医療機関を選ぶ際の考え方をお伝えができればと思います。


不妊治療をしている医療機関とは

全国の医療機関数は

現在、体外受精などの高度生殖補助医療を実施している医療機関は、
全国で約620施設ほどあります。

ただし、都道府県によっては2,3施設しかないところもあれば、
東京都のように100施設以上あるところもあります。

つまり、お住まいの地域によっては、
すでに通える範囲は1施設に限定されている場合もあるということです。

お住まいの地域の候補をリストアップ

そのため、まずはお住まいの地域に医療機関がどれくらいあるのか調べてみましょう。
情報ソースを以下に掲載しておきます。

厚労省や自治体の掲載は、保険適用の治療が行える全施設が掲載されていますが、無機質な一覧リストなので、少し見づらいかもしれません。

【おすすめのリストアップ方法】
厚労省/自治体リストは住所などから通える範囲の施設数がどれくらいあるのか?という確認に使いつつ、
下に記載した民間の検索サイトなどを使って、条件検索をして候補リスト出しをするのがおすすめです。

(ちなみに民間の検索サイトの中には、広告表示も多いので惑わされないよう、気になったら、ちゃんと医療機関のHPを見ましょう)

  • 厚労省

  • 各自治体ページ ※自治体によっては掲載がない場合も(例は神奈川県)

  • 民間企業の不妊治療施設の検索サイト

  • 弊社運営のcocoromiアプリの施設検索サイト ※DLが必要です

また、地方にお住まいの方に朗報です↓↓

  • 地方にお住まいの方が都市部の大規模クリニックで治療をする方法


どの観点から医療機関を選ぶのか

通える範囲のリストができたら、次は医療機関を選定します。
都市部のお住まいの方は沢山候補があるかもしれません。
まずは3つくらいまで絞ることを目安に、以下を考えてみてください。

選ぶポイントの一覧を下記に記載します。

選定のポイント①~⑦ (重要度を★で評価)

ポイント① 自宅からの近さ ★★☆
ポイント② 職場からの近さ ★★☆
ポイント③ 治療方針(HPや治療の説明会) ★☆☆
ポイント④ 医療機関との相性 ★★☆
ポイント⑤ 検査の種類 ★★☆
ポイント⑥ 医療機関の技術レベル ★★★

1つずつ説明する前に、結論から記載します。

結論

・ポイント①/②で医療機関をリストアップ
・その後、ポイント⑥で医療機関のレベルを表す指標を確認して候補を絞る
(過去の流産有無や、特定の疾患なければ⑤は飛ばす)
・初診や説明会参加後、ポイント③④で問題なければ決定


まず、①と②の自宅や職場の近さ。

不妊治療は女性の月経周期に合わせて治療を行うため、
通院の回数も多く、受診する日をあらかじめ予測する事が難しい場合もあります。

そのため、できる限り、日常的な生活の導線上にある医療機関を選んでいただく事で、生活への支障を最小限にできます。

特にコロナの影響でリモートワークが増えた方は、
会社近くよりも自宅から近い方が通いやすくなります。
わざわざ受診のために遠方に電車で行くのは大変になってしまい、
通院そのものがストレスになってしまうからです。

通院する時間も含めて、時間に余裕のある暮らし方をされている方や、
その時間も必要なものだと思える方は良いと思いますが、
不妊治療は長期戦になる事も多いので、
無理なく通えるか、ということも重要です。

次に、③の治療方針
医療機関のHPに、自分たちの治療方針が色濃く出ているケースもあれば、
一般的な表現で特徴がつかめない事もよくありますよね。
(患者様に寄り添う、オーダーメイド治療・・・など)

体外受精を検討している場合は、医療機関で説明会が行われていたり、
SNSやブログを書いている事もあるので、
そこで医師の人柄や治療方針を知るきっかけにするのも良いと思います。
ただ、ここはあまり公開情報で理解するのは難しいので、判断材料としては難しいかもしれません。

それよりは、④の医療機関との相性重要です。
ただでさえ、身体的、精神的負荷が高い不妊治療なので、
医療機関に通う中で治療以外でストレスを抱えることは好ましくありません。


医師や看護師、胚培養士などの医療者との会話だけではなく、
受付や予約のシステム、待ち時間など、多くのストレス要因が不妊治療には存在しています。

心地よく、、という訳にはいかないかもしれませんが、
不妊治療をすること自体、お金や時間を犠牲にしているので、
少しは自分の気持ち、直感を大切にしてあげてもいいのではないでしょうか。

ストレスが結果に影響する明確なエビデンスはありませんが、
ストレスが高くなり途中で心が折れて治療を辞める事と、
自分で決めて治療を卒業する事は、本人の納得感が全く違ってきます。

自分が無理なく通える、という事が距離的にも精神的にも重要だと思います。

そして、⑤の検査の種類。
最近の不妊治療患者さんは、本当によく勉強をされている方が多いと聞きます。SNSで色々な検査などを見て、あれもこれも、、、と思われているかもしれません。

保険適用になった今、先進医療になっている治療を受けられる施設を予め選んでおく、という事は良いかもしれません。

ただ、過剰に検査メニューの豊富さだけを気にするのは、適切ではありません。特に、年齢が若かったり、月経不順やAMH(※)に問題がなければ、先進医療を利用しなくても妊娠に至るケースもあります。

※AMH:抗ミュラー管ホルモン、卵巣の中の卵子の数を表すと言われており、妊孕性の指標の1つとして取り扱われている)

一方、高齢や過去の流産経験等がある場合は、先進医療やその他自費診療の治療ができるか、という観点で見ておくのも良さそうです。

また、子宮の疾患(ひどい内膜症や筋腫、腺筋症、手術経験等)がある場合は、妊娠後の周産期の合併症のリスクもあるので、難治性の患者さんをよく見ている以下のクリニックや、その他大学病院を検討しておいても良いと思います。

そして、最後に⑥の医療機関の技術レベル
本当は皆さんが一番気になっているのは医療機関の「技術レベル」ですよね。それをどう判断するのか、ご関心が高いと思います。

体外受精であれば、胚培養士さんの手技も大きく影響しますし、
医療機関が大学病院であれば子宮に疾患を抱えた難治性の患者さんが多く通院されていたりします。
総合的に医療機関のレベルを共通の評価指標で判定するのは非常に難しいです。

とはいえ、難しい中でも、いくつかの項目で確認していくことはできるので、以下にご紹介します。

・妊娠率(参考レベル:低)
真っ先に思いつくのはHPに掲載されている妊娠率だと思いますが、その数字だけに目を向けることは実はあまり正しくないかもしれません。

なぜならば、患者の年齢だけでなく、AMHなどのホルモン値、子宮の疾患有無、過去の治療歴など患者の背景情報を揃えなければ、妊娠率の比較はあまり意味をなさないからです。

もし医療機関の公開データが、年齢別やAMH別、疾患有無別など、患者背景情報を細かく切り分けて妊娠率を表示をしていれば、それは大変参考になるデータだと思いますし、そのような医療機関は自院の成績に自信があると思ってよいと思います。

特に40歳以上の患者さんで全国平均より大きく妊娠率が高い場合は、技術が高い可能性もあります。
(ただし、妊娠率の算出方法も問題があるので、そちらは別途記事にします)

ぜひここの読者の方には、そこをしっかりと理解した上で、
単純に「妊娠率が高く書いてある=医療技術のレベルが高い」と思わず、しっかりと情報を読み取る力を身に着けて欲しいです。

詳細な治療データをまとめること自体は、医療機関にとってはとても負荷なので、掲載していない=技術レベルが低い、というわけでもない事も頭に入れておきましょう(それだけで判断しないでね、ってことです)。


・年間の症例数 (参考レベル:中)
医療機関によっては、年間の治療件数を公開しているところがあります。
症例数というのは一定の参考になると私は考えます。
なぜならば、難しい患者さんも、比較的すぐに妊娠される患者さんも、多くの症例の知見が院内にたまっている事が「多い」からです。

また、胚培養士さんも同じです。
受精や培養において、どれだけの症例をこなしたか、というのは手技を磨く上で非常に重要な経験スキルになります。

ここであくまで「多い」と記載させていただいたのは、
大規模な医療機関では、必ずしも院内の治療方針が統一されていなかったり、医師個人の決定自体はいいのですが、医師別の治療データをちゃんと振り返り、偏った知見のまま治療が行われていないかを内省できる機会がないところも存在するからです。

余談ですが、弊社では患者様向けアプリ(https://lp.cocoromi.com/)以外にも、医療機関が電子カルテ等の治療データを整理してデータ解析ができる環境構築のお手伝いの事業も行っています。
それにより、患者さんにとって本当に最適が治療とは何か?を医療機関が考えやすくなるのではと思っています。
最終的に患者さんの大きなメリットにつながると思うので頑張ります!!


・学会/研究活動(参考レベル:中)
もう1つ別の指標として、「学会/研究活動」の履歴を参考にすることです。
HPに学会活動が掲載されている場合はぜひ見てみてください。

学会に出ているということは、
この領域の新しい知見を習得していこうとするモチベーションや、
自院の臨床のデータをまとめて発表するという事は、データを振り返って見直す機会を設けているからです。

何が患者にとって最適か?という事を、しっかりと考えているからこそ、
学会で新しい知見を他の人から習得して自院をアップデートし、
自院の新しい知見も共有することで生殖領域全体の発展に寄与している、
と言えると思います(言い過ぎかもですが、、、)。

結論

(順番前後しますが)

・ポイント①自宅からの近さor②職場からの近さで医療機関をリストアップ
・その後、ポイント⑥で医療機関のレベルを表す指標を確認、候補を絞る
・過去の流産有無や、特定の疾患なければ⑤は飛ばす)
・初診や説明会参加後、ポイント③④で問題なければ決定


まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます。
大まかな医療機関の選び方は記載しましたが、それぞれ個人の状況に応じて、参照ポイントの重みづけは異なるかもしれません。
皆様が納得のいく治療環境を提供してくれる医療機関に出会えることを祈っています!!!

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