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黄色い空気の世界

何歳だったのかは、もう随分前で正確に覚えていないけど、小学校2年生の頃だったと思う。写真のような黄色い空気の世界になったことがある。今でもその光景は忘れられない。流石に子供とは言え、普通じゃないことが起こったと認識した。
そして色のせいだと思うけど、少し息苦しく感じた。実際には、空気が薄いなんてことはなかったように思う。

その日、学校から帰っていて少しの空き時間に一人外で遊んでいた。
すると本当に突然に、しかも一瞬という速さで、世界の色が変わってしまった。少し息苦しくて、何かいつもと違う光景に不安になり、母親の元へ走った。
そして、「外の色がおかしい。何だか全部が黄色に見える。」と、違和感を訴えかけた。母からの返答は、実に意外なものだった。「別にいつもと同じでしょ。違ってもすぐに元に戻るわよ。そんなことで騒いでないで。」と、全く意に介していない。

その頃はまだ、何が不思議で、何が普通か区別がついていなかったから、不思議なことを見たり聞こえたり感じたりすると、家族には全て口に出して言っていた。だから、家族からはおかしな子供だと思われていた。そのせいで、黄色い世界の時も相手にしてくれなかったのだろうとずっと思っていた。しかし、あの時のことを何度も思い出して考えているうちに、あれは一時的に違う世界になっていたのでは無いかと思うようになった。

うまく表現できないけれど、その間だけ時間の流れが違うように感じていた。周囲の時間があまり進んでいないように感じた。
どれくらいの時間だっただろうか、4時頃から夕日に変わる前までだったように記憶している。そして、特徴的なのは南東の空から黄色になったこと。太陽なら南西から色が変わるような気がするが、南東から順に見える世界全てが、途轍もない速さで黄色い空気の世界になった。

その後、インパクトの強い出来事だったのに、周囲の人も学校でも、そんなことがあった話は、聞いたことがない。数人の友達には話したけれど、そんなことはなかったとみんなに言われた。友達や先生には、そう言う話はあまりしないようにしていたから、何か勘違いみたいだと返していた。

あれからずっと時間が経ったけれど、似たような色合いになったことは数回ある。だけど、あの時ほどはっきりと世界が変わったと思えるほどではなく、あくまで気象条件によるものだとわかる程度だ。

子供の頃に見た、黄色い空気の世界は、あの一度だけだ。