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天使の旋律

いつぶりだろう。
ひとりで何のあてもなく
外出するなんて。

唯一パスタが食べたいという欲求だけを携えて
一駅先の行き慣れた場所へ。
ひとりだと全然違う景色に映る。

ひさびさ過ぎて
ドキドキする。
ひとりで行動するって
こんなにもエネルギーがいるものなんだと
あたりまえのことに驚く。

最初にパスタを食べにお店に入ろうかと思ったけれど
混雑している感じだったので
先に本屋へ。

店内奥へ歩み進め辿り着いた先に
何となく気になる本を発見。

ページをめくり
目に飛び込んできた一節に思わず笑みがこぼれた。
そこに記されていたのは
滑稽なわたし自身の姿だった。

この本に決めた。

レジに並びながら少し待って
わたしの会計がもう終わるだろうという時
店員がポイントカードの金額をつけ間違えたと言ってきた。

申し訳ございません。もう少々お時間いただけますか?

まったく急いでいないので
のんびりしたテンポで『はい。』と伝え
しばらくその場で佇む。 
処理を終えて書店を出たところで
パスタのお店へ。

そこでも少し案内待ちをし
席に通され
真剣にメニューとにらめっこしながら
春野菜と帆立のペペロンチーノと
ピンクグレープフルーツソーダを注文。

適当にランチセットを頼みそうになりそうな自分を制し、無事に心が納得するものを選べた。

満足。

そして料理が運ばれてくるまでの束の間の時。
フッと気を抜いたその瞬間
電話は鳴った。

画面には昨日ご来店してくださったお客様。
いつもわたしが混沌としている時に
かならずやってきてくれる救世主のような人。

昨日の今日で
どうしても電話しておきたかったと
言ってくださった。

ありがたくて
涙が出そうになる。

今の状況を説明すると
とても喜んでくださった。

ひとりの時間を過ごしていること。
ひとりじゃないから
ひとりになりたいと思う
その贅沢で幸福な感覚。

またエネルギーをいただいた。
見失っていたピースが次々とはまっていく。

10分ほど話して電話を切り
パスタを食べ終え
ソーダを飲みながら
わたしは今この日記を書いている。

わたしの周りには
救いの天使しかいない。

わたしがどんなにごちゃごちゃになって
暗がりにのみ込まれても
誰かが気が付いて手を差しのべてくれる。

いつも誰かが。
向こう側のあなたが。
光を照らしてくれる。

この世界はいつも美しい。

一歩踏み出したそのとき
人はかならず救われる。


#ナイトソングスミューズ   


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