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障害のある子の親が今やるべきこと

障害のある子の親が、「親なきあと」に備えて準備した方がいいことはたくさんありますが、ほとんどが焦らずにゆっくり考えながらやればいいものです。しかし、早目にやっておいた方がいいことがいくつかあります。ここでは、”今やるべきこと”について、①親御さんに万一のことが急に起きた場合に備えてやっておいた方がいいことと、②子どもが学齢期のあいだにやっておいた方がいいことに分けて触れたいと思います。

親の急な万一への備えとしてやっておくこと

想像したくありませんが、親が若くともいつ何が起こるかわかりません。そのような事態に備えて、いくつか「今やっておいた方がいい」ことがあります。

遺言を書く

親に万一のことがあった場合、遺言がないと、遺産を思い通りに配分できないばかりではなく、判断能力が十分でない成人した子どもがいる場合は、遺産相続手続きのために成年後見人をつける必要に迫られる可能性があります。亡くなっていないもう一方の親が子どもの面倒を引き続き見ることができるので、成年後見人を付けたくないと思っていても付けることになると言うことです。現在の後見制度では、成年後見人は一回つくと外すことができません。

親が亡くなったときに成年後見人を付けたくないのであれば、遺言執行者を指定した遺言夫婦二人ともが書いておくことが有効です。

なお、子どもが未成年の場合は判断能力にかかわらず、親や特別代理人が相続手続きや遺産分割協議を行うため成年後見人をつける必要はありませんので、成年後見人対策という意味では慌てて遺言を書く必要はまだないでしょう。

子どもが成人したら”とりあえず遺言”を書いておくと安心です。

遺言の書き方等については別の機会に詳しく触れたいと思います。

子どもの記録を書く

親に万一のことが急に起こった時に、子どもが適切な支援を受けるためには、支援者たちが子どものことをよく理解している必要があります。子どもを理解してもらうためには、子どもの記録を残しておくことが有効です。

様々な団体等が記録のひな型を作っています。ひな型を参考に、家族に合ったオリジナルの記録を作ってみるのもいいかと思います。

<子どもの記録のひな型 例>
万が一に備えて~あんしんノート~ - 横浜生活あんしんセンター (yokohamashakyo.jp)

親心の記録:うえるかむ権利擁護サポートセンター船橋 (welcome-funabashi.org)

学齢期用:ライフサポートファイルって便利!|松戸市 (city.matsudo.chiba.jp)

子どもの性格や特性についてはネガティブな表現を避けてポジティブなトーンで書くようにするといいでしょう。子ども本人が記録を読む可能性があることと、それを読んだ支援者が子どもに好印象を持つことが期待できるためです。

親のエンディングノートを書く

障害のある子の有無にかかわらず、エンディングノートを書いておくことで残された遺族が露頭に迷うことが少なくなります。

特に、一人親で、子どもが障害のある子のみの場合は万一に備えて早めにエンディングノートを書いておくといいでしょう。親が亡くなった際、親族や支援者等が死亡後の手続き等をすることになりますが、親についての情報はあまり持っていないでしょうから困難が予想されます。エンディングノートがあることで死亡後の手続き等がスムーズにでき、親族・支援者等は子どもの面倒を見ることに集中しやすくなり、その結果子どもが安心することにもつながることが期待できます。

子どもが学齢期のうちにやっておくこと

判断能力や意思能力が必要な手続きを成人してからやろうとしたとき、子どもの判断能力が十分でないと判断されると成年後見制度の利用を求められる可能性があります。親権が使える未成年のうちに親が代理で手続きをしておくことで、成人してから手続きをする必要がなくなり、成年後見制度を利用する必要もなくなるものがいくつかあります。手続きによっては未成年ではなく15歳未満等でないとできないものがありますので早めにやっておいた方がいいでしょう。

銀行口座開設

給与や障害基礎年金・手当の受取り、通所先費用の口座引き落とし等で銀行口座はいずれ必要になるものです。親が手続きできるうちに子ども名義の銀行口座を開設しておくといいでしょう。その際、お金の振込等を子どもの代わりに親ができるように、キャッシュカードやネットバンキングを利用できるようにしておきましょう。子どもが成人すると、銀行窓口での振込等の手続きは子ども本人しかでず、親が代わりに行うためには銀行窓口に行かないようにする必要があります。

予備的な意味も含めて2つほど銀行口座があった方がいいかもしれません。

親が子どもの口座開設手続きを代理で行える子どもの年齢は、13歳未満、15歳未満など銀行によって違います。利用したい銀行があれば調べておきましょう。また、最近は口座開設も厳しくなってきており、未成年の口座開設時に学校名を記入させられることもあります。

すでに開設している子ども名義の銀行口座に、お金をたくさん貯めている、或いは積み立てている場合は、一旦立ち止まって必要かどうか考えた方がいいでしょう。詳しくは記事「障害のある子には必要以上のお金を残さない」の ”子ども名義の預金口座にお金をためない” をご覧ください。

マイナンバーカードの取得

写真付きの身分証明としてマイナンバーカードは便利です。15歳未満であれば法定代理人として親がカード交付の意思を示すことで取得することができます。15歳以上になると、本人の意思をカード交付窓口で示す必要があり、意思能力が十分でないと判断されると交付してもらうことができない可能エイがあります。


証券未成年口座の開設

将来子どもに投資信託等の資産を渡したい、あるいは投資信託を子ども名義の証券口座で積み立てたいと思っているのであれば、18歳未満の子どもの証券未成年口座を親が開設しておくといいでしょう。子どもが18歳になると成人向けの口座に自動的に移行されます。子どもが未成年のうちは親が取引主体となり証券等を取引することが可能です。

未成年口座は全ての証券会社が取り扱っているわけではなく、また内容等も証券会社によって少し違います。未成年口座を開設するには、その証券会社で親が証券口座を持っている必要があります。

障害基礎年金をスムーズにもらうための準備

20歳になると一定の障害のある人は障害基礎年金を受給することができます。年金の審査では、本人の状況を示す「医師の診断書」が最も重視されますが、診断書を正しく書いてもらうために以下のことをやっておくといいでしょう。

  • 障害によってできないこと・困りごとなどの具体的なエピソードをメモしておく

  • 20歳の時に診断書を書いてもらう主治医を見つけておく

  • 診断記録や心理テストの結果などを保管しておく

障害基礎年金については別の機会に詳しく触れたいと思います。

まとめ

親の万一に備えて今やった方がいいこと

  • 夫婦ともに遺言執行者を指定した”とりあえず遺言”を書く

  • 子どもの記録を書く

  • 親のエンディングノートを書く

子どもが学齢期のうちにやっておくこと

  • 子ども名義の銀行口座を作る

  • 子どものマイナンバーカードを作る

  • 証券未成年口座を作る(子どもに株・投資信託等を残したい場合)

  • 障害基礎年金をスムーズにもらうための準備


今回は”今やるべきこと”を書きましたが、次回は”ゆっくり考えていけばいいこと”を書きたいと思います。

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