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NetEaseのCEOが語るゲーム会社のミッション

去年の12月19日に中国当局が主催した「中国ゲーム業界年会」という中国ゲーム業界のリーダー達が集うカンファレンスで、ゲーム会社のNetEaseの創業者CEOのDing Williamさん(以下、Dingさん)は「中国文化産業の三つの重大ミッション」と題して演説をした。NetEaseといえば、任天堂と同じように年間売上1兆円ぐらいの大手ゲーム企業で、日本でも「荒野行動」など人気タイトルをリリースしました。

Dingさんの講演は、政府当局に媚を売るように聞こえる話とポジショントーク的な話がありながら、中国ゲーム業界で最も影響力を持つ人の一人だからこそ発言できる深い見解もあった。いかにゲームを売るといった事業面の話ではなく、Dingさんが感じたミッションも語って頂いた。私個人のコメントを混ぜながら、演説の一部を紹介したい。


Dingさんによれば、NetEase社が根を張っている中国ゲーム業界は中国文化産業の一部であり、三つの重大なミッションがある。

「一つ目のミッションは、伝統と現代を繋ぎ、品質の高い文化を流行させ、現代人の生活に浸透させることだ。

中国は古い国で、膨大な伝統や文化的な財産を誇っている。しかし、現代の中国人は、そういったものとは距離感を感じ、なかなか近づけない存在でもある。

例えば、敦煌(とんこう)の文化。非常に魅力的な古代中国の文化要素が盛り込まれているが、大都市からの物理的な距離などの原因で、敦煌に行ってその文化に触れるにはかなりのハードルがある。

ところが、ゲームのお陰で、そのハードルがぐっと下がる。この間、NetEaseの人気ゲーム「梦幻西游」に敦煌スペシャル地図を入れ、敦煌文化の要素をユーザーに届けた。それによって、ユーザーがスマホゲームをやりながら、敦煌文化の魅力を自然に感じられるようになった。」


私のコメント:
私は小学校の時に両親と一緒に海外に移住した時、中国の伝統文化や歴史に関する知識がほぼゼロだった。その後、もちろん学校でそういった知識を学ぶチャンスが滅多になかった。しかし、今の自分は、多くの同世代の中国育ちの人より、伝統文化や歴史に詳しいと自負している。その理由は、小さい頃から、中国文化や歴史をテーマにしたゲームで散々遊んできたからだ。例えば、三国志に関する知識の一部は、Keio Tecmo社の「三国志」といったゲームのお陰だった。


続いて、Dingさんは二つ目のミッション、リアルの世界とバーチャルの世界を繋ぐということについて語った。 

「NetEaseの取り組みを紹介する。去年、NetEaseがパブリッシャーとして運営している中国版のMinecraftの中に、ユーザーが消防隊員になり、消防隊員の仕事を体験できるプレイを追加した。そうすることで、普段なかなか体験できないことや学び難いことをゲームで体験できるようになった。しかも、教科書などで読むより、ずっと面白くて、臨場感が感じられるだろう

もう一つの「逆水寒」といった中国古代を背景にしたMMORPGゲームには、ユーザーが自分のアバターに少数民族のミャオ族の服やアクセサリーを着せることができる。興味があるユーザーは、NetEaseのECサイトで、ゲームに出ている服を購入できる。」


私のコメント:リアルな世界を遮断して、バーチャルの世界に浸ることはゲームの魅力の一部だと思う。その魅力は大事で、多くの人々がゲームを始めるきっかけだと思う。ところが、テクノロジーの進化により、「ゲーム=バーチャル、実際の世界=リアル」といった棲み分けが崩れつつある。ゲームがリアル世界の延長線になり、リアル世界がゲームの延長線になるといったことも想像できなくはない。そうなった場合、どのように社会に対してポジティブな効果を出せるように誘導するかは、政府のみならずゲーム会社の責任でもある気がする。


最後に、Dingさんは三つ目のミッション、中国と世界を繋ぐことについて語った。私にとって最も興味深い部分でもある。実は、最近中国のネットで中国文化を海外に発信すること、いわゆる「文化輸出」は話題にもなっている。Dingさんはまさにその議論に関する彼の見解を加えた。

「文化輸出をするときに、教科書みたいな堅苦しい形式ではなくて、カジュアルで面白くて楽しいことを発信した方が良いのではないかと思う。特に中国独自で楽しいものは、海外の人々に共感を感じてもらえるものだ。

一つの例としては、飲食文化だと思う。「何を食べるか」というのは、どの国の人でも毎日数回悩むことだ。うまい中華料理を食べさせるのは、最も海外の人々に中国文化を理解してもらう良い方法だろう。火鍋だけでも、成都風、北京風、広東風、重庆風などのスタイルがある。それらを全部食べたら、自然に中国文化の深さに興味を持つようになるだろう。海外で多くの大都市には中国政府出資の「中国文化センター」といった中国文化レッスンやイベントを開催する機構がある。1万軒の「中国文化センター」と1軒個の火鍋レストランと比べ、どちらの方は文化輸出の面において効果があるかは、容易に判断できないかもしれない。

ゲームは飲食のように、楽しくて、人々をリラックスさせるものだ。そういった意味で、ゲームを海外に輸出すればするほど、海外の人々は中国文化の魅力に引き込まれるだろう。

一つの例を紹介すると、今年10月にサッカーゲームの「Champions of the Field」をサッカー大国のブラジルでリリースした。3日間でブラジルのApp Storeのダウロードランキング1位を達成した。冗談混じりに、「中国サッカー代表はブラジルサッカー代表と全然渡り合えないが、中国のサッカーゲームはもうブラジルで人気になった」と言われた。

将来を見ると、中国の経済力が強まると、中国の文化もより世界の人々に注目され、研究され、学ばれていくだろう。その時に、どの形式で「中国文化」を海外の人々にも触れてもらうかが大事になる。ゲーム業界はこの中の重大な一部として、大事な歴史的なミッションを担っている。」


私のコメント:日本以上に、エンタメンを通じて、自国の文化を輸出するのに成功を収めた国はないだろう。素晴らしい漫画やアニメ、それにゲームを世界に届けることは、世界が日本の歴史や文化に対する理解と憧れが深まることに大きく貢献したと思う。例えば、POKEMONは日本のKAWAII文化を世界の多くの人々に届けた。


写真の出典:http://finance.sina.com.cn/stock/relnews/us/2019-12-19/doc-iihnzhfz6917048.shtml 

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