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お遍路とともにある土佐清水

魅力的なまちは、どこか住まい手とまちが良い関係でつながっている感じがしませんか。あくまで自発的で、ゆるやかな関係。都市の魅力を測る新しい物差しを提唱した『センシュアス・シティ』では、「お寺や神社でお参りした」や「地域のボランティアに参加した」などの自発的な体験こそが、地域への帰属意識を高め、つながりを深めていくとされています。
 
その点、全国から「お遍路さん」が集まる土佐清水では、お寺が非常に身近な存在。参拝したり、参拝する人に声をかけたりすることが日常です。土佐清水の外から来た人にとっても程よい帰属意識をもちやすく、地域との良質なつながりがあるのが魅力といえます。今回は「お遍路」をテーマに土佐清水の魅力をお伝えします。
 
お遍路とは、約1200年前に弘法大師(空海)が修行した88か所の霊場をたどる巡礼のことをいい、お遍路する人のことを「お遍路さん」といいます。元々は修行だった巡礼。最近では参拝する目的も多様化しているようです。健康祈願をはじめ近親者の供養、健康増進、自分探しの旅など、それぞれの思いを胸に、長い道のりを歩きます。
 
お遍路には、特にまわる順番に決まりはないですが、一番札所から順番にまわる「順打ち」が最も一般的。一番札所は徳島県の霊山寺。徳島県には合計23か所の札所があり、続いて高知県で16か所、愛媛県で26か所、最後に香川県で23か所の札所を経て結願(けちがん)となります。88か所をまわることで、煩悩がなくなり、願いが叶うとされています。

地域とのつながりと程よい距離感

写真:金剛福寺

土佐清水市には、第38番札所である金剛福寺があります。37番札所岩本寺から90km、39番札所まで60kmと、四国霊場の札所間では最長距離で、まさに「修行の道場」。弘仁13年(822年)に、嵯峨天皇から「補陀洛東門」の勅額を受けた空海(弘法大師)が、三面千手観世音菩薩を刻んで堂宇を建てて安置し開創したといわれています。
 
修行の道場といわれるほどなので、土佐清水の人は金剛福寺を訪れる人が過酷な旅の途中だと知っています。そこで根付いているのが「お接待」という文化。お接待とは、お遍路さんにお菓子や飲み物などを無償で施すことをいいます。土佐清水では、小学生からお年寄りまでお遍路さんに声をかけるのが当たり前。それだけ地域への帰属意識があるのです。
 
一方で、時には他社との関係性を絶ち、一人で過ごす時間も大切です。何をやっても顔見知りの地域住民に全部筒抜けというのも気が重い。土佐清水は、常にお遍路さんとともにあるため、外にも開かれており、都市までとはいかないまでもほどよく匿名性もあります。つながりと匿名性。関心と無関心。土佐清水には絶妙なバランスでそれが存在しています。


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