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【学童保育】夏だけ人が足りない問題について。



ちょっと前に、学童保育所(=放課後児童クラブ)の経営している方から相談をいただきました。
夏休みだけ特に人が足りない。以前は、学生のアルバイトが来てくれたのだが、コロナ以降めっきり来なくなってしまった…」というものです。

夏休みの学童保育問題は、保護者にとっても重要なテーマとなっています。夏休み中は学校が休みでありながら、保護者が仕事に従事している場合、子どもたちのサポートが課題となります。

学童保育所は、保育園や幼稚園と同様に人材不足ではあるのですが、根本的な人材不足に加え、2つの季節要因により夏の人材不足が発生します。

①「夏だけ問題」と「夏まで問題」

「夏だけ問題」
小学校は、7月下旬から8月下旬まで夏休みに入ります。その期間は、地域により異なりますが、多くの地域では40日前後が休みになります(北海道や山形県、長野県などは30日以下)。その期間は、働いている保護者が子どもを学童保育所に預けるため、夏に需要が大きく増えるのです。

「夏まで問題」
未就学児は、保育園に預けることができますが、小学生になったからといって、いきなり子どもをひとりで家に置いていくのは保護者としても心配です。そこで、学童保育所を利用するのですが、一部の保護者は、新しい生活に慣れる夏休みまでに限定して、学童保育所に預けることをします。

このように、夏だけの需要と夏までの需要が重なり、4月~9月までの待機児童が増えるのです。

②学童保育の待機児童は再び増加へ

下記グラフを見ると、2020年から減少していた学童保育の待機児童が、2022年から再び増加をしています。これは、コロナによって一時的に減少していた需要が回復したことが主な原因であると考えられます。

2008年~2012年にかけても待機児童は減少したのですが、この時期は学童保育所の設置が急ピッチで進んだことと登録児童があまり伸びなかったことがその理由であると考えられます。

過去のデータは5月時点の計測ですが、繁閑の差が大きい業界は、計測時期を増やさなければその対策が立てづらくなります。

いずれにせよ待機児童を解消するには、受入れ人数を大幅に増やさなければならないのですが、現在、受け入れ数を大幅に増やすことができません。それは、人材不足と場所の問題が主な原因になっています。

③学童保育所で働く放課後児童支援員とは?

そもそも学童保育所は、どんな人が働いているのでしょうか?

学童保育所は、1クラス(40人以下)につき2人以上の放課後児童支援員を配置するというルールがあります(特例により緩和されている)。

放課後児童指導員とは、保育士や社会福祉士、教員等の資格・免許があり、都道府県知事が行う研修を修了した者とされています。ここでも、保育士が必要になっているのです。

また、保育所と比較して、賃金等の公的支援が少ないため、学童保育所の人材確保は困難を極めています。

④放課後児童対策パッケージ

そのような中、こども家庭庁と文部科学省は、放課後児童クラブ(学童保育)の待機児童解消のため、「放課後児童対策パッケージ」を発表しました(令和5年12月25日)。

従来計画では、本年度末までに152万人分の受け皿を確保する予定だったが、これを断念し、2026年度をめどに目標を再設定しました。

新たなパッケージでは、女性の就業が進んでも対応できる整備量として「152万人分の受け皿整備を進める」とし、具体的には「開設場所の確保」「人材確保」「適切な利用調整」の3点に焦点を当てています。

学校内のプレハブ施設の整備や特別教室の利用、学校外スペースの確保などが提案され、人材確保策も強化されます。待機児童の解消を急ぐ一方で、利用調整を促すための送迎支援や、短期の開設を支援する施策も取り入れられる予定です。

「夏まで」の課題に関しては、今まで5月時点だけであった待機児童数を10月にも公開するようになったのは、少し本気になった証拠として評価しても良いのではないでしょうか。

⑤夏だけ問題にどう対応するか?

話を最初に戻して、「夏だけ問題」にどう対応すればよいのでしょうか?

繁閑の差が大きいことや給与待遇が保育士より劣ることが多いため、非常勤の職員比率が高くなります。1つ目の策としては、常勤比率を高め普段から手厚い人員配置していくこと。そうすることで夏の需要の積み増し分による人材不足を緩和させます。

ただし、いくつか問題もあります。
まず①コストがかかること。次に②必要数の人員確保が困難であることです。コストの課題を対策パッケージでどれくらい解消できるかがポイントになります。

保育士もそうですが、人材確保策として、処遇改善がメインに議論されています。そこではないことに早く気づいて欲しいと思います。処遇改善がダメなのではなく、社会的地位の向上が最優先であると考えています。①のコストの問題がクリアされれば、学童保育所の資格取得支援を行う法人の増加が予測されます。

配置基準ではなく物理的に足りない場合は、アルバイト・パートの職員を一時的に雇うことになりますが、同じく夏休みである大学生へのアプローチを考えていきましょう。

しかし、以前のように簡単に確保はできませんので、
①子どもが好きな学生が多い大学や学部、サークルをターゲットする
②その学生がアルバイトを探すタイミングで募集を開始する

ターゲットとタイミングを考えていけば、採用の難易度も下がっていきますので次年度に向けて準備を進めていただければと思います。

こちらもぜひご参加ください。


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