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詩「さようなら」

あの人から離れようと心に決めた日は
やけに空が青く
ジオラマのようで嘘くさかった

梅雨の合間の晴れ間

少し湿気を含んでいるから
空気がまとわりつく

とっさに耳元で大きな声を感じた
執念深く何度も何度も
同じことを言っている

足元の土がめくれあがって
粘土質の地層が見えている

どこから始まったか忘れてしまった
今終わりにしようとしていることも
きっと記憶として残らない

頭の上でヒバリが鳴いている

カラになった空き瓶が
重なり合って
悲鳴のような高い音を出す

「騙された」

ナマズがぬるりとくちから滑り出てきたみたいに
生臭いことを吐く人

言葉を知らないから
夜の口笛だけ不気味に響く

じっとりとした怨念と
全部お前のせいだという転嫁


光となって
軽やかなステップで
すべてのトラップをクリア


最後にひとことだけ

ありがとう
そして

さようなら

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