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フライト代は出すから。

【短編エッセイ第一弾】たまたま一夜を共にした相手から
熱烈に求められ

自宅まで来てほしい、と
フライト代は出すから、と。

東京からロサンゼルスまで行ったことあったわ

だいぶ前の話。
ハリウッド在住のカメラマンの人だった

華々しいキャリアのように思われるけど、
現場はしんどい、って言ってて。

遠距離で会えないから電話で3時間とかおしゃべりが続き
誕生日でもないのにサプライズで職場宛てに
バラの花束を送ってくれたロマンチックな人

車のドアを開けてくれるしエスコートも自然で。

急に思いついて、無計画なのにラスベガスに連れて行かれたりした

レストランに行くだけじゃなくて
手料理でおもてなし。

エンジェルヘアー、っていう極細パスタをゆでてくれた。

ごはんを食べた後はキャンドルを灯して
音楽をかけてゆったりダンス

時間をかけた愛撫のあと、
寝落ちした私をただ眺めてたんだって。

明日もう出発だと思うと泣けてくる、と
感情をそのまま吐露してくれる男の人には
心を鷲掴みにされた

感情を見せない完璧主義な人より、
ふとした瞬間に寂しそうな表情をしている様子に
ぐっとくる。

この人とはお別れしたけれど、今思い出しても素敵なことしか
思い浮かばない。(私の脳内ではすべてが都合よく編集されている)

ハリウッドからボストンへ引っ越して
金融関係の仕事をしていると風の便りに聞いた。
娘さんがいるんだって。

奥様ともめて、ふと思い出したときにメールがきた。
「君と一緒になっていたら、どうだっただろうと
思わない日はない」と。

バカじゃない?
今さら遅いよ。

私、真剣だったのに。
私、あなたのために、すべてを捨てる準備をしていたのに。
私、あなたのために、なんでもしようとしてたのに。

私がバカだった。
もっと早く行っていたらよかった。
すれ違わなかったかもしれない

・・・なーーーーんて、なりません。

だって、この人、素敵だったけれど
私のことを優先しなかったもの。

私と一緒にいる旦那さんは
私を選んでくれた。

私も、彼を選んだ。
仕事もお金も他のこともどうでもいい、
ただ一緒にいよう、と
そう決めたから今も一緒にいる。

今、隣にいる人が、正解。

そして今、
もし一人だとしたら、
まず誰よりも自分で自分を大切に扱うこと。

お客様用のティーカップなんていらないから、
今すぐそれを自分のために使う。
自分が自分を甘やかして、大切にして、
自分の好みを尊重して、
自分だけが知っているどうでもいいわがままを叶えてあげよう。

そしたら、それを尊重してくれる人が、
たくさん、あなたの周りに集まるから。

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