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【猫噺#22】猫は世界をどう見ている?act.2

「猫の目のよう」とは、猫の瞳孔が光によって瞬時に変わるように、移り変わりが激しいことを喩えています。
 気まぐれでわがままで、自分勝手な猫を象徴するように、変化の激しい猫の目。
 犬は人間の100万倍の嗅覚を持ちますが、猫は25万倍。人よりは嗅覚に優れていますが、犬よりも視覚、聴覚への依存が大きいようです。
 そのためか、いつも目と耳をくるくる動かして、周りの情報収集に余念がありません。
 そんな猫の目の話。第2話。

イラストACより

幸運を招くオッドアイ

 目の虹彩(瞳孔の周囲の、日本人なら茶色の部分)の色が、左右で異なる形質を、虹彩異色症(こうさいいしょくしょう、heterochromia iridis)と言う。
 虹彩異色症は、またバイアイ(bi-eye、片青眼)やオッドアイ (odd-eyed)とも呼ばれる。

 何年か前、エンタメ小説の新人賞で下読みを担当した人が、作品の半分くらいの主人公がオッドアイという設定だ、とこぼしていた。
 しかもオッドアイはストーリーにまったく絡んでこないので、読むほうも書いているほうも忘れてしまうらしい。
 今ならエンタメ作品のほとんどが、異世界に転生して物語が始まるようなものだ。

 オッドアイという目立つ特徴は、並のモノならぬ資質を感じさせるようだ。
 日本では、一方の目が黄色で、他方が青い猫を「金目銀目」と呼んで縁起がよい、と珍重してきた。

 ギリシャ北方のマケドニアを、人類史上初の世界帝国に押し上げたアレキサンダー大王は、「一眼は夜の暗闇を、一眼は空の青を抱く(one eye dark as the night and one blue as the sky)」と詩的に表現された、オッドアイだった。
 彼が32歳の若さで没しなければ、世界はひとつの国になって英語の勉強に苦しまずに済んだかもしれない。

パブリックドメインQより

オッドアイの白猫たち

 オッドアイは白猫に多く見られる。
 白もしくは白斑(タキシード猫など)を作る遺伝子が、発生過程で片方のみの目にメラニン(色素)が到達するのを妨げることがあるためだ。
 このため、白猫は25%の確率でオッドアイになるとも言われる。

 同時に内耳の聴覚細胞の発生も妨げられるので、オッドアイの猫は青い目の側に聴覚障害を起こしていることがあるので、注意が必要だ。

 タイのカオマニー猫( Khao Manee cat, ขาวมณี=白い宝石)もしくはカオプロート(Khao Plort, ขาวปลอด=完全な白)は、ダイヤモンド・アイ猫と言われるタイ原産の希少猫だ。
 タイの古来の文献にも出てくる在来猫で、白くてトゥルンとしたなめらかな手触りの毛をもっている。
 この猫にも、しばしばオッドアイが見られる。

 オッドアイの白猫は、黄色の目に人の現世の姿を写し、青の目に人の真の姿を写すと言われ、王家が秘匿する宝だった。
 だから近代になって、存在が確認された血統もある。

 トルコのターキッシュアンゴラ(Turkish Angora, Ankara kedisi)は、ターキッシュ・ヴァンやヴァン・キャットなどと共に、トルコの在来種で白い猫である。
 大変エレガントなたたずまいをしており、気安く触るのも憚られるような気品がある。007シリーズの敵役、スペクターの首領プロフェルドなどが抱っこしていると絵になる。
 
 アンゴラは、トルコ共和国の首都アンカラの古い呼称。ターキッシュ・アンゴラは「トルコの生きる国宝」と呼ばれる。
 人間が猫の下僕なのは、今に始まった話じゃない。

 さらにダイクロイックアイと呼ばれる、ひとつの目が2色に分かれているパターンもある。
 これには中心型虹彩異色症と、扇形虹彩異色症がある。
 とても希少なため、イヤラシイ話とても高価に扱われることがある。

PhotoACより

子猫のしるし、キトン・ブルー

 猫の目の色には、黄色(褐色)、緑色、青色がある。
 またアルビノという、色素が欠乏して白い毛色になる猫は、白猫とは異なり目の色は赤くなる。これは血液の色が透けて見えているため。

 猫の目の色は、虹彩に沈着するメラニン色素によって決まる。
 メラニンは黒褐色の色素で、紫外線により細胞核にあるDNAが破壊されるのを防ぐ機能がある。

 メラニン色素が少なければ虹彩は青く見え、メラニンの量が多くなるにつれ黄色から褐色に移っていく。
 子猫は虹彩へのメラニンの沈着が不十分なため、灰色に近い青色の目をしている。これを「キトンブルー(子猫の青)」と呼ぶ。

 猫の場合「ケツが青い!」ではなく、「目が青い!」というのが、未熟な子を叱咤するときの文句なのだ。

イラストACより

遺伝で決まる目の色

 猫が持つメラニン色素量は遺伝によって決まり、日光の少ない地域の猫は色素が少ない薄い色の目になる。紫外線の量が少ないので、目を保護するメラニン量も少なくてよい。

 いっぽう、日差しが強く温暖な地方の猫は、濃い目の色になりがちだ。紫外線からお肌や目を保護するために、メラニン量が多いからだ。

 系統によっても目の色は決まり、シャムやラグドールなどは必ず青い眼になる。
 同じく遺伝で決る毛色から、推測することも可能だ。黒猫は黄色か緑色がかった色が多く、先に述べたように白猫は青色のことが多い。

 メラニン色素が少ないと青く見えるのは光学的な問題で、晴れた空が青く見えるのと同じく青側の波長が多く散乱するため(レイリー散乱)。
 かのレオナルド・ダ・ヴィンチは、遠くにある物を青く霞んだように表現した。人は意識しなくとも、遠くのものが青く薄く見えることを感じているためだ。

 猫に外界がどう見えているのか、猫の目がどうして神秘的な色なのか、いろいろな角度から見てきました。
 けれど一番気になるのは、猫が飼い主をどう見ているか、ですよね。
 ネットで調べると、気の利かない大きな猫だと思っている、との見解が有力なようです。
 下僕に見られてなくて、よかった!!

#猫 #猫の目 #オッドアイ #キトンブルー

  

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