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日焼け止めの性能表示、SPF・PA・耐水性って何?

8月後半に差し掛かり、暦の上では“立秋“となりました。
が、まだまだ日差しが強く、日焼け止めが手放せない毎日ですね。

突然ですが、日焼け止めに記載されているSPFやPAの性能表示って何を示しているか正確に説明できますか?
特に、今年から新たに耐水性表示が追加されている日焼け止めが発売されていると思いますが、ご存じでしたか?

私自身、化粧品会社に入社し、日焼け止めの性能表示やその測定法を改めて調査したことで、日焼け止めの選び方をより一層気を付けるようになりました。

今回は、日焼け止めの性能表示【SPF・PA・耐水性】をしっかりと解説していきたいと思います!


日焼け止めの性能表示【SPF、PA、耐水性】って何?

日焼け止めは、紫外線(UV-A、UV-B)による皮膚への影響を防ぐために用いられます。
日焼け止め化粧品のパッケージには、SPFやPAなどの性能表示が記載されていますよね。
さらに、新しい性能表示「耐水性」は、ISO(国際標準化機構)の国際規格  ISO 18861として発行されたものをベースに、日本化粧品工業連合会が自主基準を設け、2022年12月に運用が開始されました¹⁾。

こちらの‘‘日焼け止めの購入時に重視すること‘‘の調査結果によると、
一番重視していたことはSPFですが、‘‘性能表示以外のテクスチャや値段などを重視して日焼け止めを購入している人は約60%もいる‘‘ということが分かります²⁾。

図1:日焼け止め購入時の重要視しているポイント
引用:日焼け止めを買うとき一番重視することは?1位『SPF』!、mellow-メロウ-²⁾
https://arinna.co.jp/mellow/)より転載

性能表示のみを重要視して日焼け止めを購入している人は、意外にもそこまで多くないですね。

ちなみに、性能表示の測定方法は、機械ではなく人の皮膚(背中)に日焼け止めを塗布して測定しているんです!
誰かの背中が紫外線防御効果を測定するための犠牲になっているなんて、測定された紫外線防御効果は実使用に近いと考えられますね。

そして、今後日焼け止めを選ぶ際の参考になればと思い、それぞれの性能表示の役割理解につながるよう改めて解説します!


【PAはUV-Aを防ぐ指標】

PAは、UV‐Aの防止効果を示す反応指標です。
UV-Aとは肌の奥まで届き、ハリ・弾力を失わせてしまうこともあります。
+の数が多いほどUV‐Aを防ぐ効果が高く、「PA+ (効果がある)」「PA++(効果がかなりある)」「PA+++(効果が非常にある)」「PA++++(効果が極めて高い)」の4段階で表示されます。

☞将来的なシワやたるみなどが気になる方は、PA表示の高いものを選んでいきましょう!

【SPFはUV‐Bを防ぐ指標】

SPFは、UV-Bの防止効果を示す反応指標です。
UV-Bは日焼けを起こす力が強く、シミを作り出すリスクが大きくなってしまうこともあります。
SPFの数字が大きいほどUV‐Bを防ぐ効果が高く、最大50+(SPFが51より大きい)と表示されます。(※1)
「何もつけずにUV‐Bを浴びて日焼けするまでの時間は約20分」とした場合、SPF1=20分間。
つまり、SPF20の日焼け止めの場合、6時間40分 UV-Bの防止効果があると考えられますね!

例)
「SPF20」の日焼け止めを塗った場合は、通常(20分)の20倍、紅斑反応が引き起こされるまでの時間を要する。
20分×20(SPF)=400分=6時間40分

より正しく表現すると、
数字が大きい程、‘‘UV-Bから肌を防御する効果が高い‘‘ではなく、‘‘長い時間UV-Bから肌を防御できる‘‘が正しい解釈になります。

※1 SPFの表示上限
   日本国内ではSPFの表示上限が50
   製品のSPFが50以上の場合は、「+」を付加して50+と表示する

☞長時間外で過ごす場合は、SPFが高いものを選んでくださいね!

【耐水性はSPF保持力を示す指標】

耐水性は、水浴後にどれくらいSPFを保持できているかを示す指標です。
★で示され、★の数が多いほど耐水性が高いです。
耐水性のレベルは「★(☆)」「★★(☆☆)」の2段階で表示されます。³⁾★の数が多い程、水浴後のSPFのUV-B防御効果が保たれていることを示します。

☞海水浴など水を浴びるようなときは、耐水性がある日焼け止めを選ぶことをオススメします!


日焼け止めの性能表示が理解できたところで、
紫外線(UV-A、UV-B)って何なのか、どのような悪影響があるのか、皮膚科学の観点から説明します。

紫外線が及ぼす皮膚への影響

紫外線の種類と皮膚への影響について整理していきます。

地表に届く紫外線はUV‐AとUV‐Bの2種類

紫外線は太陽光の一部で、目で見ることができない光であり、UV‐A・UV‐B・UV‐Cの3種類に分類されます。
波長が短くエネルギーが強いUV‐CとUV‐Bの一部は、大気のオゾン層で吸収されるため地表には届きません。
ですが、 オゾン層に吸収されずに残ったUV‐AとUV‐Bは地表に届き、皮膚への影響を及ぼします⁴⁾。

【紫外線の種類】
・UV‐A:長波長紫外線(320~400nm)
・UV‐B:中波長紫外線(280~320nm)
・UV‐C:短波長紫外線(280nm)

図2:太陽光の種類
引用:紫外線についての基礎知識、日本化粧品連合会⁴⁾より転載


紫外線の種類によって異なる皮膚への影響

紫外線対策では、地表に届くUV-AとUV-Bから皮膚を保護することが重要ですが、それぞれで波長の長さが異なるため、皮膚への影響も違います。
では、UV-AとUV-Bでどのような違いがあるのでしょうか?

■UV‐A(320-400nm)、UV-B(280~320nm)の皮膚への深度

●UV-A
UV‐Aは、UV‐Bに比べて波長が長いです。
波長が長いほど皮膚の深く(真皮)まで入りこむ性質があり、その性質により長時間照射するとハリや弾力を失わせます

●UV-B
UV-Bは、UV-Aに比べて波長が短いです。
波長が短いほど皮膚に対するエネルギーが強い性質があり、日焼けを起こす力で比べると、UV‐BはUV‐Aの600~1000倍強いといわれています。⁵⁾
UV‐BとUV‐Aの一番大きな違いは、UV‐Bは細胞の核内にあるDNAに直接吸収されてDNAを傷つけてしまう特徴があることです。

図2:紫外線の波長の長さによる皮膚への深度

■UV-A、-Bの波長による皮膚への反応

●UV-A
UV‐Aは皮膚に存在する無着色のメラニン前駆体(※1)を酸化し、2つの皮膚への反応を引き起こします。
①即時黒化
UV-A曝露(※2)後、数分程度で皮膚を灰黒色に変化させる反応で、短時間で消失します。
②持続型即時黒化(UV‐Aの曝露量が多い場合)
UV-A曝露約2、3時間後から皮膚を灰黒色から茶色味を帯びた色調に変化させる反応で、数日から数週の間黒化が維持されます。

●UV-B
UV-Bは紅斑反応を引き起こす割合が7~8割⁵⁾とされています。また、時間経過による2つの皮膚への反応を引き起こします。
③サンバーン
UV-B曝露後、数分~数時間程度で皮膚を赤く変化させる反応で、2~3日後には紅斑反応が治まります。
④遅延型黒化
紅斑反応後に褐色の皮膚色に色調を変化させる反応で、消失までに数か月から数年を要することもあります⁶⁾。

※1 メラニン前駆体:
   メラニン色素を生じる性質を備えている物質。
※2 紫外線曝露:
   皮膚から紫外線が体内に取り込まれること

図3:紫外線に対する皮膚反応



以上、今回は基礎知識として、日焼け止めの性能表示を解説しました!
性能表示の役割を理解することで、今後の日焼け止めを選ぶ参考になれば幸いです。

とはいえ、塗布量が充分でなかったり、汗や摩擦などで本来の紫外線防御効果を発揮できなくなってしまう可能性があるので、細めに塗りなおすなど使用方法の見直しも必要です!

日焼け止めの塗り方(塗布量)については以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもぜひご覧ください。
🔗もう焼かない!日焼け止めの性能を正しく発揮する塗布量とは?


他にも「これ調べて!」などあれば、調査しますのでお気軽にコメントやリクエストお待ちしております!

(執筆:まなか)


参考文献)
1)紫外線防止効果に対する耐水性測定法基準の制定について、日本化粧品工業連合会
2)日焼け止めを買うとき一番重視することは?1位『SPF』!、mellow-メロウ-
3)紫外線防止効果に対する耐水性測定法基準に関する留意事項について、日本化粧品工業連合会
4)紫外線についての基礎知識、日本化粧品工業会
5)化粧品用語集、社団法人日本皮膚科学会
6)紫外線防止効果測定について ―SPF・PA 測定法の現状と課題―,日本香粧品学会誌,Vol. 41, No. 1, pp. 44–48 (2017)