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もう焼かない!日焼け止めの性能を正しく発揮する塗布量とは?

7月になり、梅雨入りしたと言えども日差しの強い日も多く、通勤時には日傘と日焼け止めがすっかり手放せない季節になりましたね。
日差しを避けたくて、外出時にどこでもドアが欲しいと何度思ったことでしょう。。

今回は日焼け止めが手放せなくなったときにふと疑問に思ったことについてモノサシをあてていきたいと思います!


日焼け止めの使用量の実態

みなさんは、日焼け止めを塗るとき、正しく塗れているかを疑問に思ったことはありませんか?
私はUV製品の開発経験もあるので、『本来のSPFを発揮するならこのくらい塗らないとね』と頭では理解しつつ、べたつきや白浮きの不安と毎朝葛藤しながら日焼け止めを塗っています。

さて、私が言っている本来のSPFを発揮するならということを説明すると、パッケージなどに表示されているSPF数値の計測方法は、ISO(国際標準化機構)の国際規格であるISO 24444で決められており、日本の商品においてもこの測定基準に則って測定されています¹⁾。
その測定方法の中で、日焼け止めを2mg/cm2あるいは2μl/cm2の厚さで塗った状態で測定を行うことが定められています²⁾。

これってどのくらいの量か想像できますか?
イメージしやすいように説明していきたいと思います。

▶日焼け止めの使用量(理論値)

過去に日本人女性のパーツごとの面積を調べた研究結果からすると、頭の大きさは約1121.8㎠です³⁾。
そのうち、頭部を除いた日焼け止めを塗布する部位を想定すると、半分の560㎠ほどでしょうか。そこから推察するに、日焼け止めの規定量は2mg×560㎠=1.12gと計算することができます。
私の普段使いの日焼け止めだとこの量を顔全体に塗布することになります。

日焼け止めの目安量(理論値)

では、実際にこの量を塗っている人はどのくらいいるのでしょうか?
日焼け止めの使用量について調査した研究結果からは、平均で1mg/cm²の塗布量(すなわち1回の使用量は1mg×560㎠=0.56gほど)であることが分かっており、前述した理論値で求めた適量の半分程度しか塗布できていないことになります⁴⁾。

▶市場商品の日焼け止めの推奨使用量調査

この研究結果を見たときに、ふと疑問に思いました。
『なぜ、こんなに使用量が少ないのだろう。使用量を気にしていないか、もしくは使用量が間違って伝わっているのでは?』
この疑問を解消するために、市場にある日焼け止め製品の推奨使用量を調査してみました。
その際、日焼け止めの性能が同じもの(SPF50+・PA++++)とし、調査した結果を表1に示します。

表1:各製品で推奨している日焼け止めの使用量(理論値)

多くの製品で推奨されている使用量は理論上の数値と乖離する結果となりました。
もしかすると、推奨量塗布しているのに日焼けしてしまったな・・・という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もちろん、日焼け止めが落ちてしまった影響もありますが、そもそもの塗布量が少ないということも影響していると考えます。

日焼け止めの使用量と皮膚への影響

とは言っても、半分は塗れているし、長時間外にいない場合なら問題ないだろう、と思っている人もいるかもしれません。
が、そんなに甘くないのが、紫外線ダメージです。
日本人高齢者の光老化症状について長期連用試験を行った研究結果では、以下の2点があきらかとなりました⁵⁾⁶⁾。

1.日焼け止めの使用量には大きな個人差がある
  図1では、縦軸が塗布量を示しており、少ない人と多い人では1.5mg/㎠ 
  ほど個人差があることがわかります。かつ、誰一人規定量に達していな
  いこともわかりました。

図1:通常の日焼け止めの塗布量(前腕&顔)
引用:サンスクリーンの長期使用効果⁷⁾ Fig.4より転載

2.日焼け止め使用量と3年後の肌の色むら変化には相関性がある
  図2から、日焼け止めの使用量が多い人の方が、肌の色むらが抑えられ
  ていることがわかっています。

図2:日焼け止めの使用量と3年後の肌の色むらの相関関係
引用:サンスクリーンの長期使用効果⁷⁾ Fig.3より転載

日焼け止めを規定量塗るためのメソッド

上記の結果から、規定量を塗ることが将来の美肌にも繋がることがわかります。
冒頭にあった量を1度でスムーズに塗布することは難しいですが、すぐに応用できそうなメソッドについても研究報告がありましたので記載します。
それは、日焼け止めを2度に分けて塗るように指示するだけで、規定量の2mg/cm²まで塗布量を高めることが出来たという報告です⁴⁾。

まずは、自分の日焼け止めの使用量が規定量に達していないことを認識し、2度塗り、3度塗りするなどして、日焼け止めの性能がきちんと発揮できる状態にすることが光老化への第一歩だとわかりました。

まとめ

1)SPF数値の計測方法は日焼け止めを2mg/cm2あるいは2μl/cm2の厚さで
  塗った状態
で測定を行うことが定められている
2)日本人女性の顔面積から推察すると、日焼け止めの適量は約1.12g
3)実際の使用量は平均0.56gであり、理論値の半分程度
4)日焼け止めの使用量が少ないと肌の色むらが悪化傾向へ
5)2度塗りによって規定量の2mg/㎠に塗布量を高めることが可能

今回はすぐに生活に取り入れてもらうべく、日焼け止めの塗布量の実態と理想についてモノサシをあててみましたがいかがでしたか?
美容テクニックについても研究結果を基にお届けしていきたいと思っていますので、日々の生活でふと疑問に思うことなどあればリクエストお待ちしております!

(執筆:甲斐)


参考文献)

  1. 日本化粧品技術者会、化粧品用語集

  2. 日本化粧品工業連合会SPF専門委員会. 日本化粧品工業連合会SPF測定法基準. 粧技誌 1992; 26: 204-14

  3. 藏澄 美仁, 堀越 哲美, 土川 忠浩, 松原 斎樹(1994):日本人の体表面積に関する研究,日本生気象学会雑誌,31(1):5‐29

  4. Teramura T, Mizuno M, Asano H, Naito N, Arakane K, Miyachi Y. Relationship between sun-protection factor and application thickness in high-performance sunscreen: double application of sunscreen is recommended. Clin Exp Dermatol. 2012 Dec;37(8):904-8.

  5. Kunimoto K, Furukawa F, Uede M, Mizuno M, Yamamoto Y. The continued use of sunscreen prevents the development of actinic keratosis in aged Japanese subjects. Exp Dermatol. 2016 Aug;25 Suppl 3:34-40. 

  6. Mizuno M, Kunimoto K, Naru E, Kameyama K, Furukawa F, Yamamoto Y. The effects of continuous application of sunscreen on photoaged skin in Japanese elderly people - the relationship with the usage. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2016 Apr 26;9:95-105. 

  7. 水野 誠(2017):サンスクリーンの長期使用効果,日本香粧品学会誌,41(2):113‐118