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24.02.05 『こころ』

一番心に残っている本は何だろうか。ふとそんな問いを思いついて、本棚を眺めていた時、目に入ったのは夏目漱石の『こころ』だった。

この作品を、私は中学生の頃からタイトルだけ知っていた。初めて読んだのは高校生の現代文の授業で、そのときは「先生」の手紙の一部だけを読んだと記憶している。
授業内で丁寧に解説してもらいながら読んだために、今でも「下」のパートはスラスラ読める。授業では細かい表現の理由まで考察し、小説を分解する楽しみのようなものを教わったことを思い出した。

この話のすごいところは、静かに、しかし強く感情を揺さぶられる点であると思う。読了後の感情の渦に落とされた感覚というのは、何度読んでも不思議な体験であり、やめられない魅力がある。

先生とKの関係はどのようなものだったのだろうか。
苦しみながらずっと生きてきた先生は毎月墓参りに行ってはKと何を話していたのか。

二度と戻らない先生のことを、考えながら、想像しながら、私はまたこの本のページをめくり続けるのだろう。


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